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ベビー用品の開発・販売などを展開するコンビ株式会社には、新入社員のための「育児研修」があります。さらに、16年前から男性社員を対象にした育児休暇制度の義務化、出産祝いでは第三子出産で200万円を支給するなど育児関連の制度や仕組みが充実。

これらの取り組みがなぜ生まれ、どんな効果を生んでいるのか、人事担当の安藤文香さんにお聞きしました。

コンビ 安藤さん

コンビ株式会社 人事室の安藤文香さん。2002年、新卒で入社。営業、経営企画、広報等の部署を経験した後、人事室にて新卒、中途採用、研修業務を担当。「社員一人ひとりが輝く環境をつくれるよう人事としてサポートしていきたい」と日々、仕事に向き合っている。小学5年生の娘を育てるワーキングマザー。

街中でのベビーカー体験も。ママの大変さを知る「育児研修」

── 「育児研修」について、育児をテーマにした研修は珍しいと思うのですが、どんな内容ですか?

安藤さん(コンビ):

新入社員研修の一環として行っているもので、内容は「妊婦体験」「オムツ交換&お着換え体験」「調乳」「赤ちゃん人形を使っての街中でのベビーカー体験」です。

コンビの育児研修の様子

「育児研修」の様子。新入社員が慣れない手つきで赤ちゃんの着替えやおむつ替えを体験。

── 街中でベビーカーを押す体験もするんですね!なぜ、「育児研修」が生まれたのでしょうか。

安藤さん(コンビ):

もともと人材育成のために始まった制度なんです。

新入社員の場合、ほとんどが育児未経験者です。妊婦さんは日常でどんなことに大変さを感じているのか?お子さま連れの外出ではどんなことが大変なのか?赤ちゃんのおむつ替えは1日何回あるのか?など、すべてが未経験で想像もできません。実際に育児をする人の身にならなければわからないことがたくさんあります。

例えば、自分ひとりだとスイスイ歩ける道路も、ベビーカーになると通りづらい場合もあります。歩道の2cm程度の段差に引っかかることも。そういったことを、身をもって体験すれば、より自分事に感じることができます。そして、良い製品づくりに活かしていく視点づくりにも役立ちます。

また、電車の中でベビーカーを押している方、または困っている方を見つけたら手助けしたいと声をかけられるようにもなります。

「相手の立場になって考える」ことが身につくきっかけに

── 「育児研修」ではどんなことを大切にしていますか?

安藤さん(コンビ):

研修は、基本的に「育児経験者」から新入社員が育児について教わるスタイルになっています。ひとつの研修として終わるのではなく、育児経験者が子育て中にどんなことを感じているか、どんな部分で大変だと思っているか、実際のエピソードを聞きながら進めています。それによって、より実体験に近い体感ができるのです。

コンビの育児体験の様子。

「育児研修」で妊婦体験をする男性社員たち

── 実体験に触れられると気づけることも多そうです。どんな効果が生まれていますか?

安藤さん(コンビ):

新入社員は、研修後に営業や開発などさまざまな部門に配置されます。その際に、育児を少しでも知っているからできること、知らないからこそ斬新な発想が生まれることがあります。

育児研修は、育児をする人目線・赤ちゃん目線を考えるきっかけになっていると思います。「相手の立場になって考える」ことが、当社にはなくてはならないものです。その考え方を身につけるための入口になってくれていると考えています。

── 「育児研修」を受けた社員の方の声をぜひ聞かせてください。

安藤さん(コンビ):

新入社員からはこんな感想をもらっています。

妊婦体験では、床に落ちた物をただ拾うだけでも、その動作がどれだけ大変かを感じました。おなかに赤ちゃんがいると思うと無理にかがむこともできません。靴下を履いたり、靴ひもを結んだりすることも大変なんだと知りました。もし、街中で何か困っている妊婦さんがいたらすぐにお声がけしようと思いました。

赤ちゃんのおむつ替え(新生児時期)は110回程度はあると聞いて驚きました。また、足をバタバタさせる赤ちゃんのおむつ替えや着替えの大変さを実感しました。着替えが簡単にできる商品では、こうした大変なことをどんなふうにラクに楽しくしてもらえるかが大事だと思いました。自分もそういった商品を開発できるようになりたいです。

── 「育児研修」を続けるなかで、何か課題となることはありましたか?

安藤さん(コンビ):

特に大きな課題はなく、逆にベビー用品メーカーであることが育児研修をスムーズに続けられた理由だと思います。育児のノウハウに長けた社員や、保育園の運営を担うメンバーなど、育児のさまざまな分野のスペシャリストが在籍しているんですよ。

男性の育児休暇は取得率100%!事業に貢献できる工夫も

── コンビでは、子育てをしやすい環境づくりにも力を入れていると聞きました。

安藤さん(コンビ):

そうなんです。男性社員対象の育児休暇制度「HELLO(ハロー) BABY(ベビー) HOLIDAY(ホリデー)」があります。男性社員が積極的に育児をできるように、子どもの誕生から6か月以内に5日間の連続休暇を取得するもので、20年前にスタートしました。16年前からは義務化していて、この16年間は取得率100%を維持しています。

コンビの育児休暇中の男性社員

「育児休暇」を取得した男性社員

── 取得率が16年連続で100%とは大きな成果ですね!特徴を教えてください。

安藤さん(コンビ):

取得者には、「育児に関わって感じたこと」などをレポートにして提出してもらっています。自社製品を含むベビー用品を使った感想なども書いてもらいます。こんなふうに男性目線で育児の気づきを記録したレポートが16年分蓄積していて、商品開発にとても役立っているんですよ。

── レポートから16年間の育児の変化も感じられそうですね。ただ、実際に取得するには仕事の維持や昇進など課題もあると思いますが、その点はどうクリアされているのですか?

安藤さん(コンビ):

コンビでは、男性の育児休暇取得が進まない理由は、育児休暇を取得したことで「仕事にやる気がないと上司に思われるのでは」という不安、また「出世や雇用の維持に影響があるのでは」という恐怖心ではないかと考えました。

そこで、育児休暇中のレポートは製品開発や改良に活かすなど、会社の財産として事業に貢献できる仕組みをつくりました。今では上司も進んで育休の調整をしてくれる環境になり、そういった積み重ねで男性社員も気兼ねなく休暇を取得できるようになっているようです。

時間休制度や出産のお祝い・サポート制度。充実させる理由とは?

── 不安材料がなくなり、さらに事業に貢献できると思うと、前向きに育児に専念できそうです。そのほかにも、コンビならではの子育て制度があるそうですね。

安藤さん(コンビ):

はい。まず2020年より「時間休制度」を新しく始めました。子育て中の社員から、「朝、子どもを病院に連れて行った後から仕事をしたい」「月に1回だけ登校の付き添いがある」など声があがり、それらの要望を叶えられるようにと考えたものです。

また「お祝い・サポート制度」として、出産した社員へのお祝い金があります。正社員では、第一子は30万円、第二子は40万円、第三子は200万円。契約社員は、第一子は15万円、第二子は20万円、第三子は100万円が支給されます。

社員の子が入園する保育園には、1園につき5万円分の商品も提供するなど、保育園の育児環境整備支援も行っています。この保育園への支援は、社員の福利厚生にとどまらず、少子高齢化対策の一翼も担っていると考えています。

コンビ本社

── 今後はどんな環境を実現していきたいですか?

安藤さん(コンビ):

コンビの使命は「赤ちゃんを育てることが楽しく幸せだと思える社会をつくる」こと。そのためには、ベビー用品メーカーの私たちがそう思えることが大切です。

「育児研修」を通した気づきのように、周りの人を助けることも重視したいですね。職場環境もそうですが、こういった活動がほかの企業やご近所さんなどに広がっていくような良い効果を生み出す企業となっていきたいです。

「育児研修」や「育児休暇制度」などを通して、「子育て」の当事者の立場になることを大切にする。そうして育てた視点を起点に子育てしやすい環境、社会を追求していく。育児メーカーとしての大きなこだわりを感じた取材でした。

【会社概要】
社名: コンビ株式会社
設立年月: 1957年12月2日
業種: その他製品
事業内容: ベビー用品/乳幼児玩具などの開発・製造・販売輸出及び技術供与

取材・文/高梨真紀