共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

コロナ禍でリモートワークが浸透するなか、通勤しなくてもよいメリットを感じつつ、「光熱費など金銭的負担が増えてしんどい」という声が聞かれます。

そんななか、画像提供サービスで知られるピクスタ株式会社は、昨年11月からリモートワーク手当、通称「ピクワク手当」の支給をスタートしています。広報の小林さんと、人事総務部の野田さんに導入にいたった経緯や制度策定において苦労した点などをうかがいました。

PROFILE

(左)経営企画部 広報 小林順子さん、(右)人事総務部 野田えりさん

月額1万円のリモートワーク手当を全社員に支給

──ピクスタでは月額1万円のリモートワーク手当「ピクワク手当」を支給されているそうですが、導入に至った経緯について教えてください。

小林さん:

最初は、昨年春に緊急事態宣言が発令されて原則出社禁止になった際に、自宅の環境を整えるための費用として1万円の一時金が支給されました。

しかしその後も状況が改善されないなかで、夏場の光熱費なども考慮し、7月に再度1万円支給されています。

会社としてはリモートワークを推奨しつつも、緊急事態宣言が解除されている期間は、人数制限を設けて出社してもよいことになっていたのですが、ほとんど誰も出社しなくて(笑)。広々としたオフィスに点々といる状態で、平日の昼間なのに休日出社している気分でした。

ひとり暮らしの若いメンバーからは「寂しい」という声もあがったりしたので、本当にこのままリモートワーク中心の働き方に舵をきっていいのか悩みました。

ただ、リモートワークを数か月続けた結果、業務上問題がないことがわかりました。コロナの状況からも今後、少なくとも数年単位でリモートワーク中心にせざるを得ないだろうという判断もあり、202011月から正式にリモートワーク主体の働き方に移行。リモートワークを「主」、出社を「従」と位置付けられました。

同時に、毎月1万円のリモートワーク手当を支給する制度が始まったんです。

──お話を伺っていると、とてもスムーズにリモートワーク主体の働き方に移行したような印象を受けます。以前からリモートワークは取り入れていたのですか?

小林さん:

コロナ前は全社員が出社していました。ただ、もともと2020年は東京オリンピックが開催される予定でしたから、交通機関が麻痺して出社できない人が出てくるかもしれないという懸念がありました。経営陣からも「オリンピック期間だけはリモートワークを検討してもいいかもね」という話は出ていたんです。

また、弊社の事業はインターネットをベースにしており、海外にも子会社があるので日常的にオンラインでコミュニケーションをとることを多くのメンバーが経験していました。

社内コミュニケーションも直接その人のところに話をしに行くというよりもチャットで行うことが多かったので、リモートワークに対応できる土壌ができていたことは大きかったと思います。

──リモートワーク手当を毎月支給している企業の例を見ると、金額は数千円〜1万円台くらいまで幅があるようですが、どのような基準で設定したのでしょうか。

野田さん:

もちろん他社事例も調べて比較検討しましたが、弊社の場合はリモートワーク主体の働き方にするという方針に完全に切り替わったので、水道光熱費の補てんだけでなく、職場環境を整えるために必要な備品なども自分たちで工夫して、継続的に整えてほしいと考えて設定しました。

パソコンは会社支給ですが、ちょっといいキーボードやマウス、サブモニター、椅子など、プラスアルファの部分でどこまでのスペックを求めるかについては、個人の希望や職種などにもよると思うので、正直読みきれないところがありました。

備品購入の上限金額を決めるなど制限をかけるのもあまり効率的ではないですし、平均的に必要になりそうな金額のバランスを考えて、金額的には高めの設定というのは自覚しつつも、きりのいい金額で決定しました。

社内からは好評で、この金額でたりないという声は聞こえてきませんね。

全国どこに住んでもOK!フルリモートワークも可能に

──リモートワーク手当は水道光熱費の補てん以外に、どのようなことに使われていますか?

小林さん:

私は何かを買ったというよりも、リモートワークになったのを機に引っ越したんです。以前は渋谷にあるオフィスまで30分程度だったのですが、やはり家で仕事をするとなると狭いのが嫌になって。

いまは通勤1時間半くらいです。仕事で都心部に出なければならないこともあるので、出やすい距離感ではありますね。

野田さん:

私も会社まで1時間半くらいのところに引っ越したのですが、部屋がひとつ増えて広くなりました。以前はリビングの低い机とソファでずっと仕事をしていたので、腰が痛くなってしまって

リモートワーク手当はもっぱらマッサージ代に消えていました。引っ越してからは仕事机も置けるようになったので快適ですね。

小林さん:

リモートワーク手当を支給するタイミングでフルリモートワークも可能になったので、なかには熱海や釧路など遠方に引っ越した人もいます。ライフステージの変化で、結婚などを機に地方への引っ越しを検討している人もいますね。

野田さん:

地元愛が強く、Uターンしたメンバーも何人かいます。出社がメインの状態なら会社を辞めざるを得なかったような人や、家庭の事情で遠くに引っ越さなければならなくなった人からは、「今のピクスタだから働き続けられます」という声を聞いたりもするので、社員にとってよりよい環境になったのではないかなと思いますね。

熱海に引っ越したというfotowa事業部 部長 李せいさんのご自宅の様子。窓からは熱海の海が一望できる

──自分の生活も大事にしつつ、仕事を続けられるのはいいですね。フルリモートワークも可能になったとのことでしたが、家庭の事情などがなくても遠方に引っ越していいんですか?何か条件などはあるのでしょうか。

小林さん:

条件は特にありません。職種などによる制限もなく、基本的には個人の希望でフルリモートワークが可能です。ただ、遠方に引っ越しを考えている場合は、事前に上長に確認を取るようには伝えています。

野田さん:

フルリモートワークを認めるにあたり、制度も整えました。自宅から本社オフィスまでの直線距離100km圏内は「通勤可能者」、100km以上は「フルリモート者」として区分けしたのです。

出張旅費規程で、宿泊出張の定義が100kmなので、そこで線引きをした形です。通勤可能者が通勤した際の交通費は月額2万円を上限に実費支給、フルリモート者は出張扱いになります。

フルリモート者はよほどのことがない限り出社はしない方です。出社や移動が伴う場合は、本人の希望ではなく、業務上必要なときに上長の指示で発生するものになります。その際は出張旅費規程に準じて交通費や宿泊費が支給されます。

──特別な理由がなくても地方に引っ越しができるのはいいですね。リモートワーク主体の働き方に関わる制度作りで苦労されたところはありましたか?

野田さん:

やはりどんな制度でも一度作ってしまうとあとから変えるのが難しくなるので、いろいろ悩みながらではありましたが、特に悩んだのは、フルリモートワークをどこまで認めるか、特例にするのかという点でした。

そこは社内でもかなり議論しました。地方に引っ越した人を再度関東に呼び戻すというのはなかなか厳しいものがありますから。

最終的には、制限をかけるよりも個人が才能を発揮できる環境を担保することが最も優先順位が高いという結論に至り、働く場所にはこだわらないということになりました。

ただ、海外移住についてはビザや税金などの関係で手続きがかなり煩雑になり、社内で完結できるものでないのでNGにしています。ワーケーションはOKですが、あくまでも生産性が担保できる状態であることが前提なので、なんでもかんでもいいというわけではないですね。

最初の緊急自体宣言発令後に全社でテレワークをスタートさせ、秋にはリモートワーク主体の働き方に完全にシフトすることを決めたピクスタ株式会社。テレワークに伴う金銭的負担を補うテレワーク手当の支給や、特別な事情がなくてもフルリモートワークや引っ越しを認めるなど、柔軟な対応も参考になるところが多いのではないでしょうか。

取材・文/田川志乃 画像提供/ピクスタ株式会社