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かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。

気になるけれど、何から始めればいいのかわからない。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」をイロハから進学塾VAMOSの代表富永雄輔さんに教えていただきます。

今回は東京都とその周辺の千葉県・神奈川県・埼玉県の中学受験事情について。

中学受験が盛んな地域に住んでいるとつい焦りがちですが、「受験は高校受験から」という選択もあるはず。それでは遅いの?具体的な学校名とともに伺います。

内申重視で「バランス型」が有利な高校受験

まず言っておきたいのは、「どの都道府県にもいい公立高校はある」ということ。だから、中学受験をしなかった、したけれど結局公立中学に進むことになったとしても、がっかりすることはありません。

ただ知っておいた方がいいのは、中学受験と高校受験では求められる対策がまったく違うということです。

中学受験は、基本的には試験当日の4科目または2科目のテストの合計点で合否が決まります。

一方、高校受験を突破するにはバランスが必要です。なので、わが子がバランス型かどうかを見て、中学受験にするか、高校受験にするかを決める必要があるでしょう。

バランスが必要とはどういうことかご説明しましょう。

高校受験では「内申点」が合否に大きく影響します。内申点とは、中学校が出す内申書(調査書)を点数化したものです。主要5教科はもちろん、体育や美術などの実技科目、部活や生徒会活動などについても記載されます。

東京都の場合だと、都立高は内申点が3割、当日の試験が7割という配分で合否が決まります。私立高校も、内申点がいくつなら加点〇点、英検〇級なら加点というふうに内申点などが加味されます。内申点によっては当日試験さえ受ければ何点でも合格する「確約」をもらえることも。

オール5をとれるタイプの子だったら、高校受験を選んでもまったく心配はないでしょう。一方で、極端に苦手な科目がある、テストが得意でも先生とそりが合わなくていい成績がもらえないといったタイプは、中学受験のほうが向いていると思います。

どの地域にもいい高校はあるけれど、努力の方向が中学受験のように「当日の試験の結果だけ」ではない。高校受験は戦い方が違う、ということを覚えておいてください。

名門公立高校の勢力図に変化、先入観は捨てるべし

「御三家のような難関校に入れないなら、公立中学でいい」という保護者が一定数います。名門公立高から難関大に進学した保護者に多いタイプです。

もちろん考え方は人それぞれです。ただ、公立高校から大学への進学実績は、保護者の学生時代とは明らかに変わっていることは知っておいてください。

進学実績の指標ともなる、東京大学合格者数(※2021年)に基づいてお話しします。

東京都の場合、中高一貫の難関校に匹敵する合格者を出している都立高は日比谷高校(68名)です。西高校は20名、国立高校は19名とグッと数が減ります。

千葉県も埼玉県も県立高の東大合格者数が昔と比べて減っています。というのも、保護者世代にはなじみのない学校千葉なら渋谷教育学園幕張(渋幕)や市川学園、埼玉なら栄東や開智学園などの中受組が善戦するようになり、そちらや都内の一貫校に優秀な生徒が流れるようになったからです。

千葉県の県立高の東大合格者数は、県立千葉19名、県立船橋14名、県立千葉東5名。なお、県立千葉は中高一貫化していて半分弱が中入組です。

埼玉県の県立高だと、県立浦和46名、県立大宮15名、浦和女子6名。神奈川県は、県立横浜翠嵐50名、県立湘南20名(※2020年)、県立川和4名です。

公立は都県トップの1、2校をのぞくと苦戦しているのが現状です。

一方、私立中高一貫校についても保護者世代の先入観は禁物です。海城や豊島岡女子学園など、かつては併願校のイメージが強かった学校が進学実績を伸ばして人気を集めています。広尾学園や東京都市大附属など新興校の進路指導も注目されています。

昔のイメージにとらわれて、子どもの選択肢を狭めることのないよう気をつけたいところです。

大手マンションがあるところは中学受験が盛ん!?

わが子が5年生くらいになったとき、「お友だちみんな受験するみたい」と言われて、「そうなの!?」と慌てる方もいます。

そうならないよう、自分が住んでいる地域が中学受験が盛んなのかどうか、低学年のうちにざっくりと把握しておきましょう。

東京都だと、都心部や世田谷区、目黒区あたりは、「中学受験するのが当たり前」という雰囲気です。

それ以外のエリアでも、大手デベロッパーの大型マンションが建っているような地域は中学受験が盛んですね。

千葉県や埼玉県も、大宮、津田沼、幕張、市川あたりは中学受験がすごく盛んで、駅前には大手塾が軒を連ねています。東京に1時間ぐらいで通える場所は東京と同様だと考えたほうがいいでしょう。

神奈川県も、湘南エリアは私立中学が少ないのでそれほどでもありませんが、横浜エリアはもともと中学受験が非常に盛んです。近年は、東横線と副都心線の接続、湘南新宿ラインなどにより、都心の学校に通いやすい場所が増えたので、中学受験志向がさらに高まっています。

沿線の駅に大手塾の看板があれば、それは一つの目安になります。「このへんは通いやすい場所に私立中学がいろいろあって、中学受験に熱心な家庭が多いのかも」と考えていいでしょう。

中学受験を選ぶか高校受験を選ぶかは、各家庭の方針次第。ただ、どちらにしてもなるべく早くから情報収集や対策をしておいたほうが有利になることは確かです。

中学受験の正体_matome1

公立高校・私立高校の大学進学実績が、親世代の頃とは様変わりしている。保護者はそのことを理解し、先入観にとらわれずに子どもの進路を考えることが必要です。住まいの地域性も考慮して、情報収集は、低学年のうちからしておきましょう。

監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ