陰キャ嫁_義母と料理対決

二世帯同居でよく巻き起こるトラブル、1、2を争うのが「食事」についてではないでしょうか。味付けの好みや献立の世代差…。

我が家は幸い、私の作る料理の献立や味付けに表立って文句を言われたことはありません。

意識して味付けの好みを義父母に寄せていますし、義父母も好き嫌いが少なく、たいていのものは美味しく食べてくれるので助かっています。同じように、義母の作ってくれる料理もいつも美味しく頂いています。

しかし先日、思わぬことで私と義母の間に軽く火花が散ったのでした。

ポテトサラダ推しの義母

どの家にも語り継がれる「おふくろの味」いや、今の時代、おやじの味でも誰の味でもいいのですが、子どもの頃から慣れ親しんだ大好きな料理、家庭の思い出の味というのは誰にも1つや2つあるものではないでしょうか。

自分が作った料理が、温かい思い出として子どもたちの記憶に末永く残ったら保護者としてこんなに嬉しいことはありません。

そんな我が家の思い出の味ナンバーワンの座は、私の作るメニューか、それとも義母の作る料理か

静かで熱い戦いの火蓋は、ある日、突然切って落とされました。

ある日の昼下がり、義母とテレビを観ていて、「おふくろの味」の話題になりました。子どもたちにとって、我が家のおふくろの味といえば何でしょうね?という話になったのですが、私の作るメニューはとっさに思いつきません。色々と作ってはいるはずなのですが

悩んでいると義母が「おふくろの味じゃなく、おばあちゃんの味ならきっと私の作るポテトサラダね!」と言います。

確かに、義母はよくポテトサラダを作ってくれます。手間のかかる料理なのにその手間を惜しまず、マメにかなり頻繁にまたポテトサラダ?と思うまでに…。

しかし、その押しの強さのおかげか、義母の料理=ポテトサラダ、という図式は家族に浸透していることは間違いありません。

わが子に「おふくろの味」を聞いてみれば

そんな強みのあるレシピを、私ははたして持っているかしらそう考えていると、いつものように義母があっけらかんとした笑顔でこう言い放ちました。

「我が家のおふくろの味はおばあちゃんのポテトサラダね!」と。

カッチーン。

比較的温厚な自覚のある私ですが、この発言はなかなか癇に障りました。

おふくろの味ナンバーワンの座は渡さねぇ!そう拳を握りしめ私は、当人たちに聞いてみるのが一番だ!と、子どもたちに直接「我が家のおふくろの味って何?」と尋ねてみました。すると二人はしばし悩んだ後にこう答えました。

息子の答えは「ローストビーフ」…それは私、頻繁に作っていないよね?君が今食べたいものだよね?

「…お味噌汁?」と娘。味噌汁はおばあちゃんの方が圧倒的に頻繁に作っているけどね?

えっ普段のお母さんが作る料理そんなに印象薄い?あんまり美味しくない?と若干のショックを受けながら聞くと、子どもたちから返ってきた答えは、

「だってお母さん色々作るから決まったメニューってあんまりないから

なるほど、言われてみれば確かにそれはそうなのです。もとより飽きっぽい私、そもそも定番のメニューというものがあまりありません。

いつも冷蔵庫の中にあるものを適当に見繕って夕飯を作るという主婦ならではのスキルが、こんなところで仇になるとは…!

野菜炒めの味付けがおいしい理由

なるほど頻度の問題か!じゃあこれからは毎週決まった曜日に決まったメニューにすればいいのか!などと思ったりもしましたが、やはりそこは飽きっぽい自分です。週に1回でも同じメニューの繰り返しは、作る方が飽きるに決まっています。

しかし、このままでは思い出の家庭の味の座は義母のポテトサラダに奪われてしまいます。いや奪われたって構わないといえば構わないのですが、しかしやはり悔しい。主婦としてのコケンにかかわります。

そんな時、娘がぼそっと呟きました。「お母さんの野菜炒めの味付けがおいしい」と。

娘よよく言った!そう、いつも我が家の野菜炒めは冷蔵庫の残り野菜をかき集めて作るので、具材はその時によってまちまちですが、味付けは確かにいつもほとんど同じです。味には自信があります、なぜなら私が大好きな、某食品メーカーの塩だれで味付けをしているからです!

これでいいのだろうか。

家庭の思い出の味が既製品の塩だれで本当にいいのだろうか。

しかし、ものは考えようです。私の思い出のおふくろの味は、実母の作った煮込みうどんですが、それだって言ってしまえば味付けは市販のめんつゆ100%です。

いいんだ、どんな調味料を使ったっていいんだ。

家族が心を込めて作れば、それは家庭の思い出の味だ…! 数十年後、成長して懐かしく思い出すのは意外とそういう料理かもしれないし!

そう自分に言い聞かせながら、今日も私は義母のポテトサラダに対抗するべく、冷蔵庫の野菜をかき集め、塩だれ味の野菜炒めを作っています。

数十年後、成長した子どもたちに、「おふくろの味って何だった?」と聞いて答え合わせをする日が来るのを、今からひそかに楽しみにしています。

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ