千葉県八街市で飲酒運転のトラックにはねられ、児童5人が死傷した事故から1年。
 「減らない飲酒運転の実態」をお伝えします。
 捜査員への密着取材で分かったこととは…。

捜査員
「運転手さん、左によけてとまってください。車の運転手さん、左によけて停まってください」

 少しでもおかしいと感じた車を呼び止め、飲酒運転の疑いがあるかどうかを調べる千葉県警の捜査員。

 2021年6月、八街市で飲酒運転のトラックにはねられ、児童5人が死傷した事故を受けて、県警は2021年10月から3か月間、飲酒運転を集中的に取り締まる強化プロジェクトチーム・飲酒PTを立ち上げました。

 本部交通部捜査員が徹底的に声掛けを行いました。
 中には逮捕したドライバーも…。

 PTで得られた経験やノウハウをどうするのか。

 県警は2022年1月から、本部の捜査員が警察署を訪れ、交通課の若手捜査員に座学や摘発の同行指導などを通してノウハウを継承しようという「巡回教養」を始めました。

佐藤警部補
「酒(飲酒運転)って、減った感覚あります?あんまりないですよね」

 6月22日、事故が発生した八街市の現場を管轄する佐倉警察署に、本部・交通指導課の佐藤健吾警部補と小林淳巡査が訪れました。

 佐倉警察署は、5月末時点の飲酒運転の検挙件数が、県内でワースト5位。

 佐藤警部補は、こうした管内の情勢や、実際に飲酒運転が摘発されている場所をまとめたマップなどを活用しながら、指導しました。

佐藤警部補
「悪質運転手を1人でも多く道路から排除出来たら良いと思う」

 佐藤警部補が運転する覆面パトカーには、佐倉警察署の若手捜査員が同乗します。
    
 この日は、巡回教養が始まったきっかけにもなった場所、八街市へ…。

 午後8時過ぎ、別のパトカーから「飲酒運転の疑いのあるドライバーから話を聞いている」と一報が入りました。

 軽乗用車のそばに立っていたのは、60代の会社員の男性。

 別のパトカーがパトロールをしていたところ、男性の運転する様子から飲酒運転の疑いが浮上したということです。

 検出されたアルコールは、呼気1リットルあたり0.15ミリグラム。
 酒気帯び運転は、基準値0.15ミリグラム以上で、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金の処罰対象となります。

 男性は捜査員に「酒を飲んでから12時間以上たったため、飲酒運転の自覚がない」などの趣旨の話をしていました。

 警察は、男性を酒気帯び運転の容疑で書類送検する方針です。

 そして、6月上旬、松戸警察署には巡回教養に訪れた佐藤警部補の姿が。

佐藤警部補
「大回りだな」

 午後10時半ごろ、覆面パトカーは、交差点を膨らんで左折する車を発見しました。

捜査員
「前の車の運転手さん、シルバーの車の運転手さん、いったん停まってください。いったん停まってください」

 運転していたのは、会社役員の男性70歳です。
 呼気からアルコールのにおいが…。

佐藤警部補
「運転手さんごめんなさい。気のせいだったら申し訳ないけど、ちょっと飲んでます?」

運転手の男性
「飲んでない」

 しかし、飲酒検知をすると…。

佐藤警部補
「0.29という数値が出ているので」

運転手の男性
「ビール飲んだかもしれない」

 基準値0.15ミリグラムのほぼ倍、0.29ミリグラムが検出されました。

 男性が飲んだと主張するのは、焼酎2杯程度。

佐藤警部補
「これだけお酒出ているから、正直言いますと、缶ビールで例えると『1本ちょっと飲んじゃった』とかいうレベルではないです」

運転手の男性
「ないの!?ビール飲んだ後の焼酎が効いたのかな」

佐藤警部補
「運転を始める前にアルコールが残っている自覚はあったんですか?」

運転手の男性
「いや、ない。あったら乗らないでしょ」

佐藤警部補
「あったら乗らない?うーん」

 男性に悪びれる様子はありません。

佐藤警部補
「去年、八街で飲酒運転のトラックが小学生の列に突っ込んだ事故知ってます?」

運転手の男性
「ああ、いたいた」

佐藤警部補
「で、ちょうど6月で節目の年なんです。我々もいま千葉って、すごく飲酒運転多いので、取締りを強化している中で、きょうこれがあったんですけどね」

運転手の男性
「ごめんなさい。水と同じ感覚で。がばがば飲んでいるわけじゃないけど」

 男性には赤切符が交付されることに。
 免許取り消しとともに罰金の処分です。

運転手の男性
「免許なくなるとさみしいね」

佐藤警部補
「まあ、ずっと守ってきたものなんでしょうけど、お酒の運転で事故を起こしちゃうと、当然被害者の方も苦しむし、自分や加害者の方の家族も結構苦しんじゃうんですよ」

 多くの悲惨な事故を見てきた佐藤警部補。
 その言葉に動かされたのか男性からはこんな言葉も。

運転手の男性
「(免許取り消しは)しょうがない。本当に良い戒めです」

佐藤警部補
「最後、運転手さんからそういう言葉を聞けて良かったです」

 八街市の事故から1年。

 飲酒運転は、いまだに後を絶ちません。

佐藤警部補
「(飲酒運転は)大げさに言うが、街中で拳銃を放つようなものだと思うので、飲んだらハンドルを握らない。当たり前のことをしていただければ」

 あの事故について、県民全員が他人事ではなく、いま一度自分の立場に置きかえることが求められています。

 県警によりますと、八街市の事故後も、2021年7月から2022年5月まで摘発された飲酒運転は基準値未満の警告も含めて1399件。

 前の年の同じ期間に比べると、41件増加しているということです。

 飲酒運転をどう撲滅するのか。あの事故から1年という節目を迎え、改めて問われています。