在住10年間を振り返る
 年間二百四十万人の来館者数を誇る金沢21世紀美術館(金沢市)の館長を今年三月に退任した秋元雄史氏(61)=東京芸術大美術館長・教授=が、金沢在住の十年間を振り返った新著「おどろきの金沢」(講談社プラスアルファ新書)を出版した。「北陸新幹線開通後、なぜ金沢にこれだけ多くの観光客が集まっているのか、背景にある不思議な街の魅力を知ってもらいたかった」と話す。
 秋元氏は地中美術館(香川県・直島)の館長を経て二〇〇七年から金沢21美の館長を務めた。現代美術が専門だが、「金沢・世界工芸トリエンナーレ」「工芸未来派」展などを通じて地元工芸界と先進的な美術館との橋渡し役にもなってきた。
 著書には、館長としての活動や生活を通じて経験したエピソードをちりばめながら、金沢人が持つ街へのプライドや暮らしに根差した文化的土壌の奥深さを紹介。「金沢人の気風、気質をおもしろく伝えられたらなという気持ちで書いた」
 金沢での十年を「戦災や大災害に遭わず、濃厚に文化的空気が残る全国でもまれな都市。暮らしの中で、土地に蓄積した時間を感じ、自分の財産になった」と振り返る。前金沢市長の山出保さんを「恩人」といい、「文化政策には首長の教養と理解度の影響が大きいことも実感した」とも。
 新幹線開通で激増した金沢への観光客数は衰えをみせないが、著書には「金になるからといって金沢らしさを消費してしまうのではなく、続けてきた金沢らしい暮らしを文化として残してほしい」との思いも込めた。百八十三ページ。八百六十円(税別)。 (松岡等)