ふんどし姿の男衆が一つのざるを奪い合う、津市の無形民俗文化財「ざるやぶり神事」が、同市河芸町一色の八雲神社であった。
 神社によると、室町時代に近くの海岸にたどり着いた落ち武者が、空腹のあまり民家へ押し入り麦の入ったざるを住人と奪い合ったという言い伝えが残る。祭りはこの話にちなみ豊漁や家内安全を祈願して四百五十年以上続いているという。
 約百人の男衆は午後八時すぎ、「わっしょいわっしょい」の掛け声を上げながら、もみくちゃに押し合って境内に入った。一団は観客の間近を右へ左へ動き回り、そこに次々に水がかかると、境内は人いきれが立ち込め、観客からは歓声が絶えなかった。
 終盤に直径九十センチの竹ざるが男衆の中に投げ込まれると、懸命に手を伸ばして奪い合った。

 (森耕一)