◆動機、精神障害 どう判断
 浜松市北区三幸町で昨年四月にあった一家四人殺傷事件の裁判員裁判で、殺人罪などに問われた池谷佳峰(よしたか)被告(32)に二十一日午後三時、静岡地裁浜松支部で判決が言い渡される。「好きだった」「仲は良い方だった」と自ら振り返る家族をなぜ襲ったか、十一日からの公判で被告の口から明確に説明されることはなかった。動機をどう理解するか、精神障害は影響したのか。判断が注目される。
■争点
 仕事のやり方をめぐるトラブルが発端となり、被告に妄想性障害があったことに争いはない。争点の一つは責任能力で、検察側は「障害は直接の影響を与えておらず、完全責任能力があった」と無期懲役を求刑。弁護側は、障害で判断や行動制御の能力が著しく低い「心神耗弱」だったとして懲役十五年相当を求めた。
■妄想性障害
 被告を精神鑑定した医師によると、障害は事件の約一週間前に発症。上司とぎくしゃくし、急激に精神状態が悪化した。「嫌がらせを受けている」といった被害妄想が膨らみ、対象が会社の不特定多数に拡大。「死ぬのが一番早い」と自殺を考えるようになった。
 被告は事件直前に凶器のサバイバルナイフをインターネットで注文。その後に精神科受診の予約を入れたが、治療の機会がないまま事件を起こした。
■動機の飛躍
 公判では、妄想と、家族を襲う動機との間の「飛躍」に関心が集まった。裁判長が「障害が直接影響しないなら、なぜこんな残虐な犯行をしたのかふに落ちない」と医師に尋ねた。
 医師によると家族は妄想の対象ではなく、「巻き添えにするのは障害の影響では説明がつかない」と説明。「自信を持って仕事を進めてきたが一転、崩れた。殺すほど『恥ずかしい』という感情が影響しているのでは」と推測した。
 検察側は「いじめられているのを家族に知られると恥ずかしい」との供述などを踏まえ、「強い自尊心がある性格傾向を前提にすれば合理的に説明できる」と主張。弁護側は「障害の影響がなかったとしても動機に飛躍があり、了解不能」と強調している。
 当の被告は法廷で、「記憶が曖昧」「分からない」と繰り返すばかりだった。
(松本浩司)