◆親子の絆 「双方の気持ち聞く」指導奏功
 富士市に本拠を置くチアダンスのクラブチーム「CHEERS FACTORY(チアーズファクトリー)」が五月に米フロリダ州で行われた世界大会のシニア編成(高校生以下)の「Pom部門」で連覇を果たした。小学生の二チームも全国大会で優勝しており、クラブ設立わずか十二年ながら快進撃を続けている。輝かしい成績を残す強さの秘密とは。
 「ひどすぎて言葉にならないよ」「疲れてたりとかあるのかもしれないけど、じゃあ、来なきゃいいじゃん」。六月の日曜日、市内の体育館。クラブ代表の米山温子さん(37)がマイクを握り、中二〜高二の六人に厳しい言葉をぶつけた。
 米山さんは東海大一高(現東海大静岡翔洋)でチアを始め、国内外の大会で優勝経験もある。清水エスパルスのチアチームなどを経て二〇〇五年に地元の富士市に教室を開いた。
 厳しい指導でメンバーが涙ぐむ場面もあるが、見守る保護者たちは平然としたもの。ともに中三の娘を預ける安井久美さんは「子どものいい部分をきちんと引き出してくれる」、森美穂さんも「ここまで言っても大丈夫と見極めての指導なので、お任せしています」と信頼を寄せる。
 練習を保護者に見せないクラブも多いが、「親子二人三脚で」をモットーに全てを公開。必ず付き添う必要はないが、親も「頑張って」などと子どもに声をかけてほしいというのが米山さんの考えだ。
 ときに親子関係にまで立ち入ることで信頼関係を培ってきた。反抗期の娘に悩む母親には「私の気持ちも交えてこう話してみます」と伝える。「毎日、送迎してくれるのは誰。習うのもただじゃないのよ」と子どもをしかることもある。「保護者と子ども、双方の気持ちを聞くことで相乗効果が生まれます」と米山さん。
 イベント出演が多いのも特徴の一つ。地域の祭りや高齢者施設訪問、結婚式など多いときは年間百三十件にも上る。舞台でのトーク内容も声のトーンも全てメンバーが考える。幼稚園では目線を低くし、高齢者施設ではゆっくり話す。足元も砂利敷き、芝生、コンクリートなどさまざま。状況に合わせて踊る経験が大舞台で役立つという。
 海外のステージは、日本にはない床の材質、照明による暑さ、観客の熱気など想定外の事態も多い。ある大会では床がカーペットで滑りにくかった。練習通りの回転数は回り切れそうにない。ならばと直前に演技を手直し。回転を減らしながらも、全員の動きがピタリと合うよう調整した。
 「多くのイベントに出ることで、地域から力をもらっている。その力で世界で競い、また地域の方に見ていただく。幸せな循環ができている」と米山さんは感謝を口にする。
 チアーズファクトリーは二十三日に富士市中央公園周辺で開催される富士まつりにも出演し、世界一のチアダンスを披露する。
(前田朋子)