先頭打者で右越え本塁打を放ち、歓喜の瞬間を味わった松阪商の大原光陽選手(三年)は、最後の打者として試合終了の瞬間を迎えた。
 「チームを勢いづけたい」と臨んだ一打席目。スライダーをとらえると、打球は右翼席へ。甲子園出場経験のある津商からの先制点に沸く応援席を見上げながら、ゆっくりとダイヤモンドを回った。
 本塁打は、練習試合も含めて高校通算四十五本目。「ホームランを量産できる打者になりたい」と打撃練習に力を入れ、練習場では九十メートル先にある高さ二十メートルの柵越えを狙い、バットを振り続けてきた。
 大会では二回戦で3安打3打点と活躍したが、本塁打はなかった。それだけに先制の一打を「練習の成果が最高の場面で実った」と自賛した。
 しかし、5点差の九回2死一塁の場面。「後につなごう」と振り抜いた打球は遊撃手の正面に。一塁にダッシュしようとした瞬間、両足がつって倒れ込んでしまい、その間に一塁に送球され、試合は終了した。
 サイレンが鳴り響く中、立ち上がれずにいると、仲間に抱きかかえられ、整列に加わった。
 「最後の最後で仲間の信頼に応えられなかった」。本塁打を打つ個人の目標は達成できたが、勝利に貢献できなかった悔しさをにじませた。

 (大島宏一郎)