満塁のピンチでも同点に追い付かれても、笑顔を見せた伊吹の中川弘毅投手(三年)。サヨナラで敗戦が決まり、最後に仲間と整列したときだけは、涙をこらえ切れなかった。
 春ごろから「こっちの方がプレーに余裕が生まれる」と、試合中はどんな時も笑っていようと決めた。効果は自分自身だけでなく、仲間にも作用した。捕手の小林瞭太朗主将(同)は「いつも笑っていて、自分たちも肩の力が抜ける」と中川投手を頼もしく感じていた。
 この日は先発で登板。外角中心の直球や変化球で打たせて取る投球で、2点リードのまま五回まで0点に抑えた。得意球の一つは、遅い変化球。打者が大きく空振りするたびに口角が上がり、小林主将に「今までで最高の投球」と言わしめた。
 七回途中でマウンドを降りても、攻守の入れ替わる時にはベンチ前に立ち、笑顔で選手を迎えた。ピンチの場面は「大丈夫や」と叫び、仲間も笑顔で応じた。九回は、あと一人抑えると延長戦だった。ずっと笑っていようと決めていたが、「最後は我慢できなくて…」。
 「ピンチの時、顔は笑っていても精神面で負けた」と涙を見せる中川投手。そんな姿に小林主将は「ダブルエースの一人として頑張ってくれて、百二十パーセントを出し切る最高の試合だった」。支えられた仲間たちが満面の笑みで、中川投手をねぎらった。

 (高田みのり)