「相手投手が代わったが、やることは一緒だ。甘いのを打つだけ。さあ行こう」
 一、二回に6失点し、反撃を狙う半田。四回の攻撃の前、後藤浩介監督(22)の初々しい掛け声がナインを勢いづけた。
 石田匠選手(三年)はその言葉通り、狙い球を左前にはじき返して出塁し、後続の安打で生還。ベンチで「よくやった」と後藤監督が上げた右手に、自らの右手を合わせた。「気持ちを乗せてくれるんですよ」。試合後、石田選手は笑みを浮かべた。
 後藤監督はこの春、教員になったばかり。五年前まで、一宮高校の球児だった。先生よりも「兄貴分」が似合う。「兄と弟みたいな存在。だから一緒に盛り上がりながらやる」と後藤監督。
 着任前、選手たちは新しく来る監督に想像を巡らしながら、「新任の先生だから間違ったことを言うかもしれない。そのときはみんなで話しに行こう」とも言い合った。
 後藤監督が着任早々、部員に伝えたのは「楽しくやろう」。練習でグラウンドに出て、身ぶり手ぶりでアドバイスする姿に、選手も信頼を置くように。部員は親しみを込めて「浩介先生」と呼ぶ。
 経験豊富な平林宏監督率いる星城にコールドで敗れ、後藤監督は「チームも、監督としても負けました。経験の差です」と悔やんだ。ただ、和気あいあいの雰囲気が勝利を呼び込み、1点差の接戦やサヨナラ勝ちで三回戦まで快進撃を続け、星城にも一矢報いた。
 大岩樹主将(三年)は「自分たちが力を出し切れたのは浩介先生のおかげ」と感謝する。一緒に過ごしたのはわずか三カ月余り。それでも選手と新米監督の絆は固かった。

 (安福晋一郎)