6点を追う九回、岐阜聖徳ナインの思いは一つ。“絶対に正悟に回そう”。2点を返し、なお2死一、二塁。あと一人出塁すれば出番だ。次打者席で待つ川合正悟主将(三年)の目からは既に涙がこぼれていた。「皆の思いが伝わってきた」
 同時に昨夏を思い出していた。今でも夢に出てくるあの場面。同じ長良川球場での大会初戦、1点を追う最終回の好機に安打を放ったが、走者が本塁で刺されて試合終了。「長良川球場に帰ってきて勝つんだ」。そう誓って一年間、白球を追ってきた。
 新チームになると、林範和監督に主将に指名された。「最初は皆、自分の言うことを聞いてくれなかった」。信頼を得るために何でも率先してやった。甲子園出場を目標に掲げ、チームに一体感を生んだ。
 この日はプレーでも主将としての気概を見せた。2点を追う八回、2死一、三塁で適時打。「応援してくれる皆さんへの恩返しの気持ち」。意地の一打に、走りながら何度も拳を突き上げた。
 最後は、粘りも及ばず、前の打者が倒れ、試合は終わった。「バネにしてやってきた」という昨夏の悔しさを完全には晴らせなかった。それでも「このチームで最後まで戦えたのが誇り」。号泣しながら言葉をつないだ。

 (下條大樹)