「お父さんと同じユニホームを着て甲子園のマウンドに立つ夢がかなった」。最後の打者を右飛に打ち取ると、マウンド上であまり感情を出さない松商学園の直江大輔投手(二年)は、両手を上げて満面の笑みを浮かべ、涙を見せた。
 父の晃さんは同校の投手として春夏通じて三度甲子園に出場。直江投手も他の高校から誘いはあったが「お父さんと同じ松商に入り、二〇〇八年から遠ざかっている甲子園に自分が連れて行く」と伝統校の門をたたいた。
 決勝はベンチで登板に備えた。じりじりと点差を詰められ、追い付かれた直後の六回途中に出番がきた。「準々決勝は周りに助けられた。今度は自分がカバーする」と気迫の投球で1死一、二塁のピンチを切り抜けた。その後も低めに球を集め、緩急をつけた投球で相手打線を抑え込んだ。
 優勝まであとアウト3つに迫った九回、先頭打者に四球を与え、同点の走者を背負った。それでも焦りはなかった。勝ちを意識し、終盤に逆転を許した昨秋と今春の公式戦の経験を糧に練習を積んできた。投げ急がなければ打たれない自信があった。冷静に思い切って腕を振り、後続を断った。
 昨夏の雪辱を果たし、次は父が立った甲子園のマウンドへ。「お父さんに負けないよう、緩急をつけて打たせて取る投球をしたい」と闘志を燃やした。

 (牧野良実)