独立行政法人国立美術館の柳原正樹理事長(富山県黒部市)が今月、東京国立近代美術館工芸館が石川県立美術館近くに移転することに触れ「県立美術館なんて誰も行きません」などと発言した問題で、柳原氏は二十五日、石川県庁などを訪れ、谷本正憲知事らに謝罪した。(並木智子、小室亜希子)
知事「事実誤認甚だしい」
 柳原氏は「申し訳ございませんでした」と頭を下げ、谷本知事は「県民は怒りを覚えていると思う。美術館を運営される方の発言とは到底思えない。事実誤認も甚だしい」と語気を強めた。
 その上で、県立美術館の二〇一五年度の入館者数が約四十五万人と、全国でも多かったと説明。工芸館開館まで日程が短いとし「誘客や地域のにぎわいにどうつなげていくのか。ベクトルの方向を同じにしないといけない」と諭した。
 柳原氏は面会後、「認識不足があり撤回した。工芸の都に工芸館の作品が来ることに全く異論はない。移転に関していろんな問題があり、頭が痛いと言ってしまった」と述べ、辞任は否定した。東京国立近代美術館長の神代浩氏も同行した。
 県立美術館では嶋崎丞館長に謝罪。嶋崎館長は「(発言について)理解に苦しんでいたが、心からおわびしている様子でほっとした」と述べた。「入館者数は数字のマジック」と発言した金沢21世紀美術館と金沢市役所も訪れ、それぞれ島敦彦館長、山野之義市長に謝罪した。
 柳原氏は十三日に富山県庁での行事に出席後、報道陣に「金沢21世紀美術館は成功しているが、数字のマジックがある。入り口、出口、全部足し算している」「工芸館が行くとなると、誰も来ない場所になる。どう活性化するかが頭の痛いところ」と述べた。 
移転工芸館名称や作品など来月公表
 東京国立近代美術館工芸館の石川県への移転について、独立行政法人国立美術館の柳原正樹理事長は二十五日、八月中にも移転する作品数や工芸館の名称、職員数など、移転後の運営の基本的な考えを公表する方針を示した。独立した館長は置かない見通し。
 謝罪に訪れた県庁などで、東京国立近代美術館長の神代浩氏とともに明らかにした。
 柳原氏は、報道陣に「早急に文化庁などと相談し、どんな作品を持ってくるのか、名称にするのか答えを見いだしたい」と話した。
 館長職について、神代氏は「東京国立美術館の中の一つの施設という意味では、独立に館長を置くことにはならない」と明言した。名誉館長を置く可能性は残した。