渾身(こんしん)の一球がミットに収まると、空に向かって指を突き上げた。彦根東の増居翔太投手(二年)は、154球目に投じた直球で、最後の打者を空振り三振に仕留めた。
 二年生ながら、事実上のエースとしてチームをけん引。シードとはいえ、「最も勝ち上がるのが難しい」とされた組み合わせを勝ち上がってきた。増居投手は、選抜に出場した滋賀学園との大一番で登板。強力打線を相手に2失点と好投した。
 出どころの見えにくいフォームから繰り出すキレのある直球が持ち味。球速は135キロ程度だが、実際はそれ以上に速く見え、対戦相手からは「浮き上がってくる直球」と表現されていた。
 この日は、最初からエンジン全開だった。一回、3三振を奪う上々の立ち上がり。「相手に直球を印象づけたかった」と振り返った。途中から、春以降に磨きをかけたスライダーで打たせて取る投球に切り替え、打者を翻弄(ほんろう)。ピンチの場面で投じる、ここ一番の直球を引き立てた。
 條野正宗捕手(三年)は「百点満点に近い投球だった。受けていても球が手元で伸びてきた」と評価。増居投手は「一球ごとに先輩が声を掛けてくれた。打線を信じていたから、思い切り腕を振れた」と振り返った。

 (大橋貴史)