奥三河の山間部で、イワタバコが咲き始めた。湿った岩肌に着生する多年草。密集した葉っぱの間から、紫色の小さな花が顔をのぞかせている。
 山野草愛好家の豊根村坂宇場、村松茂芳さん(67)は、北設楽郡内のイワタバコ自生地をほとんど知っている。中でも、東栄町下田の国道473号に沿って連なる延長約二百メートルの岩壁がお気に入りのポイントだ。
 タバコに似た緑の葉がびっしりと岩肌を覆い、「自生地としては恐らく郡内最大でしょう」。岩と葉、花が醸し出す涼感に魅せられて開花期には足しげく通い、カメラに収める。
 今年は春先の冷え込みのせいか、例年より一カ月近く開花が遅れた。花の寿命は一週間ほど。咲いてはしぼみを繰り返し、八月十日ごろまで楽しめるという。

 (鈴木泰彦)