長崎出身の井波彫刻師 「若い人たちへメッセージに」
 平和の風をまとって核廃絶の未来へと駆けるオートバイ−。原爆の惨禍からよみがえった長崎市の「被爆クスノキ」の枝や幹で作ったオートバイの木彫作品が完成した。手掛けた富山県砺波市杉木の日展作家で井波彫刻師の音琴(ねごと)和彦さん(58)は「若い人たちへのメッセージになれば」と願っている。(山森保)
 材料は、二〇一三年十月の台風で傷つき、原爆投下後も命をつないできた被爆クスノキから伐採された枝や幹。
 樹木医として治療した海老沼正幸さん(長崎市)が昨年九月に講演で富山を訪れた際、音琴さんの工房を訪れ、長崎県大村市出身の音琴さんと意気投合。「世界平和のための作品を作ってほしい」と、倉庫に眠っていた軽トラック一台分を譲り渡した。
 音琴さんはチェーンソーを使った現代彫刻を得意とする作家。数点手掛けている得意のオートバイを主題に構想を練り、今年一月から制作していた。
 作品は全長三メートル、高さ一・四メートル、重さは約百五十キロ。うねるような車体、ひしゃげたタイヤ、マフラー…被爆に耐えて緑の葉を茂らせ、長崎市民を勇気づけてきたシンボルにふさわしく、火の鳥を題材に、再生と平和への祈りをチェーンソーとのみで刻んだ。心臓をかたどったエンジンや座席は木肌を生かし、風防などの製材した部分は表面を焦がしたり、一部彩色したりして色合いを調整。すべて伐採木だけで仕上げた。
 三十日から八月中旬までいなみ木彫りの里創遊館(富山県南砺市北川)で公開する。十月初旬には、海老沼さんの協力で長崎市の平和公園施設内で展示する。音琴さんは「被爆クスノキには長崎市民のいろんな思いが詰まっている。小片もむだにしなかった。怖いほどの勢いや力強さを感じてほしい」と話している。
 被爆クスノキ 1945年8月9日に投下された長崎原爆の爆心地から約1キロの長崎市坂本の山王神社境内入り口にそびえる一対の巨樹。幹回り8メートルと6メートルで、樹高はともに20メートル前後。市天然記念物。歌手の福山雅治さんが曲「クスノキ」で取り上げた。