JRと名鉄の刈谷駅前に刈谷市が設置した喫煙所が通勤時間帯、愛煙家で混雑している。入りきれない人が、公道でたばこを吸う光景が常態化。通行人から「煙たい」「臭い」といった苦情が市に寄せられている。市には、路上喫煙を禁じる条例はなく、当面は喫煙者のマナーに任せるほかない状況だ。
 市は昨年三月、喫煙所を北口に二カ所、南口に一カ所設置した。いずれも屋外。灰皿とついたては、日本たばこ産業(JT)が寄贈した。
 三カ所とも、ついたて内に入れるのは数人。このうち、北口の通路階段下にある喫煙所を平日の午前八時半ごろに訪ねると、通勤途中に一服する会社員らで混雑していた。ついたての中には五人ほどしか入れず、二十〜三十人が歩道や車道にはみ出し、紫煙をくゆらせていた。
 刈谷駅の近くには、自動車関連企業などが集積。一日の平均乗降客はJR、名鉄合わせて約八万人に上る。
 駅周辺ではかねて、歩きたばこやポイ捨てが問題となっており、喫煙所設置で、分煙が進むと期待された。実際に、ポイ捨ては減ったという声は聞かれるが、喫煙所にあまりに多くの愛煙家が集まるため、周辺を歩く人の受動喫煙が新たな問題になった形だ。
 喫煙しない女性会社員(29)は「いつもたばこのにおいがする。通勤前なのに良い気持ちはしない」と迷惑そう。一方、喫煙者の六十代男性は「行政がここで吸うことを認めている。健康被害というが、喫煙者にとってはストレス軽減になっている」と訴える。
 刈谷市の担当課は取材に「設置場所などに問題意識を持っている」と話す。喫煙所を他の適地に移したり、路上喫煙を禁止する条例をつくったりできないか、可能性を探り始めた。
◆行政設置で人集中、撤去例も
 分煙を進めようと行政が喫煙所を設置した結果、その周辺から受動喫煙の苦情が寄せられた事例は、浜松市でもあった。
 JR浜松駅では二〇〇六年九月に、駅前広場などに喫煙所を設置したが、喫煙者が指定のスペースからはみ出すようになった。通行人からの苦情を受け、市は一二年度に撤去している。
 受動喫煙対策に詳しい産業医科大(北九州市)の大和浩教授は「企業でも受動喫煙防止の取り組みが進み、社内の喫煙所は少なくなった。行政が公認した喫煙所には人が集中する」と指摘する。
 大和教授によると、喫煙者であっても、他人の煙を嫌う傾向があるため、喫煙所では、人が広がりがちだという。「喫煙所を置くなら、周囲に煙が流れないよう、四方を高い壁で取り囲む必要がある」と話している。
 (土屋晴康)