◆「囲碁・将棋と違う対話能力」
 自分の立場を偽るためにうそをついたり、相手のうそを見破ったり−。そんな人間ならではの駆け引きをインターネット上で楽しむ「人狼(じんろう)ゲーム」を人工知能(AI)同士で戦わせる大会に、静岡大情報学部(浜松市中区)の学生チームが参加している。大会運営にも携わる同学部の狩野芳伸准教授(自然言語処理)は「ゲームを通してAIの対話能力を測ることができる」と語り、囲碁や将棋で人間を圧倒するのとは違う、新たなAIの可能性を探っている。
 「うそはよくないよ」「次に襲われるのは絶対僕だ…」。パソコンの画面に映し出されたゲーム上の思わせぶりな発言は、どれもAIが考えたものだ。狩野准教授は「相手の発言を踏まえて話しているものも何体かいるようだ」と話す。
 人狼ゲームは、参加者の中に村人として紛れ込んだオオカミ役を、会話の中から探り当てる。村人を襲うオオカミと村人のどちらが生き残るのかを争うため、参加者の発言でゲームの流れが変わる。
 AIが対戦する「人狼知能大会」には、静岡大を含め九チームが出場。現在はAIが正常に作動するかを審査する予選の最中で、本格的な対戦は八月下旬にある。出場メンバーの大学院一年箕輪峻さん(23)は「対戦までに、AIが受け答えできる会話のパターンを増やしたい」と意気込む。
 狩野准教授によると、囲碁や将棋は、互いの状況が全て把握できる点がAIと相性が良かった。人狼ゲームは相手の役割が分からないまま戦う点で囲碁・将棋と異なり、「相手を信頼させる」「うそを見破る」といった能力が必要になるという。
 狩野准教授は「機械が人間と対話するシステムは、まだ内容を理解して話しているとは言い難い。目的を持ちながらも自由に会話する人狼ゲームを新しい評価方法に活用できれば、研究面でも大きな価値を持つ」と話す。
 大会結果は、八月三十日に横浜市であるゲーム開発者会議「CEDEC(セデック)2017」で発表する。宝塚大学の渡辺哲意准教授(情報デザイン)の協力で独自のゲームキャラクターも用意し、模擬対戦や人間との対戦も予定している。
(吉川翔大)