器に斬新デザインと機能性
 最新のデジタル技術と手仕事を組み合わせた新しいものづくりに挑戦する小さな会社が、金沢市内にある。従業員九人のベンチャー企業「secca(雪花(せっか))」(昭和町)。「量産とは違った工芸の魅力」を大切にする若者たちが、使い勝手が良く斬新なデザインの器作りを軸に新風を吹かせている。(督あかり)
 seccaの器は、スプーンですくいやすいようになめらかな曲線を帯びたり、プロ向けに料理表現が広がるように一つの器にくぼみや面が設けられたり、独特な美しさがある。3Dコンピューター利用設計システム(CAD)で立体的に設計した後、手で仕上げることで洗練されたデザインと機能性を実現している。
 大手カメラメーカーでデザイナーをしていた上町達也代表(34)が二〇一三年に創業し、一五年から新たなものづくりを本格的に始動。主力は器作りで、上町代表と同じ金沢美術工芸大卒の柳井友一さん(34)が主導する。柳井さんは大手電気機器メーカーでデザイナーとして働いた後、「消費されていく工業デザインではなく陶芸の道に進もう」と器作家に転向した。
 「斬新な商品を普段使いしてもらいたい」と柳井さん。プロ向けの食器のデザインを二次利用して価格を下げ、インターネットや東京都新宿区のセレクトショップ「BEAMS(ビームス) JAPAN」で販売している。海外からの発注も受ける。
 最新技術は、後継者不足に悩む九谷焼の原型作りにも一役買っている。原型の設計図をデジタル化。3Dデータを基に型を切削すれば、納期を短縮でき、素早く産地側に提案できる。柳井さんは「デジタル機器を使うことで事前にシミュレーションでき、依頼主の安心材料にもなる」と語る。
 上町代表は、工芸に関わらず多分野のクリエーターと協働する仕組みをつくりたいと考えている。「先人が積み上げてきたものに敬意を持って、最先端の技術と考え方で、新しいものづくりを提案していきたい」
ギター職人 仲間入り
 seccaに、昨年から新たな分野の仲間が増えた。石川県立工業高校を卒業後に長野県の楽器メーカーで働き、金沢市にUターン就職した北出斎太郎さん(28)だ。主力の器作りに楽器作りが加わった。
 北出さんが作るギターは体にフィットするようにカーブしており、木目を生かして温かい。一般的には海外の広葉樹を使うが、国産材に目を向け、特殊な加工を施した針葉樹のスギを使っている。
 3Dデータでの設計から全ての工程を一人でこなす北出さん。「家具にもなるようなギター」作りを目指している。「メーカーは分業制だけど、ここでは誰もやらないことに挑戦できる。違う業界の人と一緒にものづくりができて刺激になる」と語る。
技術の進化 表現広げる
 伝統技術ディレクターの立川裕大さん 全国に先駆け2000年ごろから伝統と先端技術を組み合わせたものづくりを提案し、01年から富山県高岡市の鋳物メーカー「能作」のブランドの価値を高める取り組みを手掛けているが、ここ数年の3D技術の進化は目覚ましい。量産するため型が必要とされる工芸分野で用いられるようになってきた。(seccaのように)デジタル技術を使いこなし、職人の感覚や知識を組み合わせてものづくりをする「デジタル職人」は、今までになかったタイプ。工芸の表現のあり方が広がるだろう。