◆島田の川根地区で
 茶どころの島田市川根地区(旧川根町)で、地元出身の男性が友人と企業組合「ピース・ティー・ファクトリー」を設立し、耕作放棄の茶園の再生に取り組んでいる。何年も伸びきった木を茎ごと刈り取り、火入れして「川根薪火(まきび)三年番茶」として八月から売り出す。作業にアルバイトを雇うなどして、地域活性化にも貢献する。
 設立したのは、理事長の東洋文(ひがしひろふみ)さん(53)=藤枝市前島=ら四人。東さんは旧川根町の高日向で中学卒業まで暮らした。祖父の始めた茶園があったが、東さんは福祉の仕事に就いて実家に戻らなかった。
 仕事で体調を崩した時期があり、農薬や化学肥料を使わない自然栽培の食品に関心が向いた。友人の田中一孝さん(32)は藤枝市の茶農家に生まれ、放棄茶園を再生して三年番茶を作る奈良県の自然農園で働いたことがあった。東さんも同じ茶農家出身ながら、実家の茶園を三十年以上手入れしていないことが気になっていたという。
 昨年二〜三月、試験的に東さんの実家の放棄茶園を使って、三年番茶を製品化することにした。高さ四〜五メートルの伸び放題の木を根元近くまで二百四十キロほど刈った。東さんの実家近くの休止工場で、丸ごとチップのように砕き、地元の間伐材を使って釜で焙煎(ばいせん)した。友人の内沼良晴さん(66)らがパッケージ担当などで加わった。商品を「川根三拾年番茶」と名付け、三人で手分けして売った。放棄茶園は当然ながら農薬や化学肥料を使っていない。手応えを得て、翌年の本格事業化を決めた。
 東さんらは今年二〜三月、東さんの実家茶園と、五年間放置してあった川根本町梅地の知人の茶園から計千五百キロを収穫した。四月に出資金二十万円で島田市川根町の工場を拠点にピース・ティー・ファクトリーを登記した。
 全国一の茶産地の静岡県でも、放棄茶園の問題は深刻だ。イノシシなどのすみかになり、周囲の農作物に被害をもたらす。県農業ビジネス課によると、一年以上耕作していない荒廃農地は増加傾向にあり、二〇一五年に五千八百三十八ヘクタールに上る。茶園やミカン園を含む樹園地も六百ヘクタール台だ。高齢化や後継者不在が背景という。
 三年番茶はまろやかな甘さがあり、自然志向・健康志向が強い人たちに人気が高い。収穫期は、新芽が出る前の十二〜三月。東さんは「緑茶を主とする農家の農閑期に当たる。木に絡んだつるの除去作業などで作業所や高齢者の雇用につなげたい」と、地元での就業機会の創出を考えている。
 現在は熟成中の木を八月から火入れして二千個ほど作り、一個八百円でインターネットなどで販売予定。八月十九〜二十日に川根本町でのオーガニックキャンプに初出展する。問い合わせは、東さん=電090(1108)4212=へ。 
(築山英司)