石川県能美市のいしかわ動物園で五月に誕生した国の特別天然記念物トキの幼鳥「みのり(美能里)」が一日、死んだ。園内のトキ里山館から巣立ったトキの幼鳥が死んだのは初めて。同館でふ化した第一号のひなだった。(蓮野亜耶)
いしかわ動物園 ふ化1号
 県自然環境課によると、七月二十六日に飼育員が餌を与えるために飼育ケージに入った際、飛び立ち、ガラス面に衝突。強い脳振とうを起こした。三十一日から餌を食べなくなり、今月一日午前九時ごろ死んだ。死因は解剖して調べる。
 ガラス面は高さ二・五メートルで、トキが餌のドジョウを食べる池の前にある。ガラス面に衝突するのを防ぐため、天井から一・三メートルまではポリエチレン製の網を設置。ガラス面と網は一メートルの間隔が空けられていた。
 一方で、トキが餌をついばむ様子を来園者が見やすいよう、地上から一・二メートルは網はなく、この部分に衝突した。七月初旬から飛び始めたが、障害物をよけるなど旋回はうまくできなかったとみられる。
 みのりは、トキ里山館で公開中のトキのペアから五月二十二日に誕生。能美で生まれたトキの子孫が石川の里山に戻ってみのりをもたらしてほしいとの思いを込めて「みのり」と名付けられた。親の二羽は引き続き公開する。
 同園ではこれまで六十羽がふ化したが、十羽が巣立つ前に死んだ。巣立った五十羽のうち四十三羽は佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)に移し、残り七羽を同園で飼育していた。
安全網のすき間 不運
 ガラスにぶつかり、ふ化から二カ月余りで死んだ「みのり」。ガラスには昨年十二月まで安全策の網が張り巡らされていたが、観賞しにくいとの来園者の要望を受け、園は観覧通路沿いの一部分だけ取り払った。みのりは、その一部分に衝突。飼育担当者は「不運な事故だが、網があれば死ななかったかもしれない」と悔しさを隠せない。
 ケージは広さ五百十平方メートル、高さは最高で一三・五メートル。網はケージの側面をほぼ覆う形で張られている。衝突したガラス沿いにはトキの生き餌を入れる池があり、水中のドジョウなどが観覧通路からガラス越しに見られる構造。展示施設がオープンした昨年十一月当初は、池の前のガラスにも網が張られていた。
「来園者に見やすく」裏目
 しかし昨年十二月、園はガラス面の下部(縦一・二メートル、横三メートル)の網を取り払い、観覧通路から見やすいようにした。みのり以外に、これまで三羽の幼鳥を育ててきた実績があるが、網の上部に衝突することはあっても下部に衝突するケースはなく、網はなくても大丈夫だと判断。ガラスと網の間に生き餌のドジョウなどが逃げ込むのを防ぐ狙いもあったという。今回、みのりの動きは「想定外」で、悲惨な結果を招いた。
 園によると、給餌する飼育担当者はケージに入る際に「入るよ」と声をかける。通常、トキは出入り口近くの止まり木に戻って餌が池に入れられるのを待つ。事故が起きた二十六日は、みのりは出入り口のほぼ反対側に位置する池におり、飼育員が声をかけて入ると、いつも通り止まり木方面に飛んだが、予期せずUターン。ガラスに衝突した。
 園は事故を受けて取り払った網を再設置。来シーズン、再び繁殖に挑戦する。飼育担当者は「元気に育っていただけに残念。事故の教訓を今後の繁殖に生かしていくしかない」と声を落とした。 (吉野淳一)