意識の低さ、指摘する声
速度や時間にも注意
 石川には大きな津波はこない−。そんな油断は心のどこかにないだろうか。東日本大震災で全国的に危機感が高まったものの、県内の防災士らには、地元の危機意識の低さを指摘する声もある。県が五月、津波浸水想定区域図を五年ぶりに見直したことを受け、津波の危険性を再び考えたい。(福岡範行)
 そもそも人はどれほどの津波で流されるのか。研究を重ねる港湾空港技術研究所(神奈川県横須賀市)の耐波研究グループ長、鈴木高二朗さん(49)は「ひざぐらいの高さの波で人は立っていられない。成人男性なら五〇センチほどだ」と語る。
 速度が速ければ二〇、三〇センチでも流される。一メートルもあれば縦渦に巻き込まれ、水中から浮き上がれない恐れもある。体重の軽い女性や子どもはより低い津波でも影響を受けやすい。
 「東日本大震災の津波を見たせいで二、三メートルの津波は小さいと考える人もいるが、小さい津波でもいろんな危険がある」。東北大災害科学国際研究所(仙台市)の今村文彦所長(55)=津波工学=は警告する。
 津波の高さばかりを見て、一喜一憂しがちな傾向は根強い。県が見直した浸水想定では、県が独自に選んだ断層で計算した前回に比べ、国指定の断層を基にした今回、最大津波高が上がったのは珠洲市と穴水町だけだった。ある自治体の防災担当者は「珠洲市は上がったが、うちは下がった」と安堵(あんど)感をにじませた。
 しかし、高さ以外に目を向ければ、新たな警鐘も鳴っている。今回から示された「影響開始時間」だ。地震直後に海岸線から沖合三十メートル地点の海面が二十センチ動く時間を調べてあり、珠洲市と輪島市で一分未満、七尾市で一分など能登地方の六市町で十分未満の地点があった。
 今村所長は影響開始時間を「船や養殖いかだが流される指標」だと説明する。陸上に影響は出なくても、海水浴中の人が流される恐れもある。
 日本海側には、津波の押し引きが長く続き、後から来る波の方が大きくなりやすい特徴もあるという。ロシアや朝鮮半島まで近く、津波のエネルギーが対岸にすぐに到達し、反射して戻ってきてしまうからだ。入り組んだ湾や川沿いでは流れが強まり、破壊力が増す恐れもある。
 今村所長は「津波にはさまざまな側面がある。幅広く対策を考えてほしい」と呼び掛けている。