継承者から疑問の声
 金沢を代表する伝統芸能として金沢市の無形文化財に指定されている「金沢素囃子(すばやし)」のホームページ(HP)での紹介文について継承者や学識経験者から疑問の声が上がっている。市側は「長唄などの邦楽から独立した囃子だけを指す」と主張するが、継承者らは「唄も含めて、金沢素囃子だ。誤って紹介している」としてHPの修正などを求めている。(草野大貴)
 市は二〇〇四年ごろから金沢素囃子をHPに掲載。「長唄、常磐津(ときわづ)、清元などの邦楽や舞踊から囃子のみが独立した、唄の入らない演奏のみの形式のものをいいます」と紹介している。
 市文化財保護課の飯田一哉課長は「HPの紹介文は、素囃子を無形文化財に指定する際の指定理由書の記述を基にしている」と話す。「唄の入らない」とあるのは「当時の文化財保護審議会の判断で、市としては唄以外の囃子だけを無形文化財に指定している」と説明する。
 これに対し、金沢素囃子保存会で副理事長を務める杵屋喜三以満(きねやきさいま)さんは「素囃子で主に演奏するのは長唄。長唄のほとんどには唄が入っており、唄がないのは間違いだ」と話す。そもそも素囃子は、踊りなしに唄や三味線、囃子を演奏することを指すと指摘する。
 喜三以満さんは、これまで素囃子を披露する際、市の記述を基につくられた紹介文を何度も訂正してきた。「実際には唄もあり、全部をいれて金沢素囃子。市の指定は囃子だけかもしれないが、少なくともHPには『市は囃子だけを指定している』などと説明を加えてほしい」と訴えている。
 金沢素囃子について研究する国学院大研究開発推進センターの高久舞客員研究員も「茶屋街の関係者への聞き取りや過去の文献を調査した結果、金沢素囃子の定義は踊りのつかない演奏のこと」と指摘。「市の考え方は、伝承者たちの意識と乖離(かいり)している」と話した上で「唄も含めて稽古をしている伝承者たちは悲しい思いをしているに違いない。市は定義から再考すべきだ」と話す。
80年に市無形文化財指定
 金沢素囃子 長唄を中心に常磐津、清元などを演奏する。一般的に唄、三味線、大鼓(おおかわ)、小鼓、太鼓、笛が合奏する。1978(昭和53)年には金沢素囃子保存会が結成され、80年に市の無形文化財に指定された。現在、金沢おどりをはじめ、公的機関のイベントやレセプションパーティーなどで披露されている。金沢のひがし茶屋街、主計町(かずえまち)、にし茶屋街の芸妓(げいぎ)を中心に継承されている。