ニセ電話詐欺の被害者宅などへ金品を取りにいく「受け子」の仕事が、インターネットの掲示板で募集されている。本紙記者が仮名で申し込み、携帯電話番号を伝えると、その日のうちに指示が来た。電話をしてきた男はうそを並べ、ときに怒声を放った。軽い気持ちで応募する者を支配し、逃げられないようにしていく、あり地獄のような手口を知った。(ニセ電話詐欺取材班・伊藤隆平)
男から電話「ぶっちゃけ詐欺です」
ためらうと「びびってんじゃねー」
 「高額 日給」などとネットで検索を続けると、表示されたタイトルの中にその掲示板があった。「明日北関東で単発高額な仕事あります。短時間で稼げて帰れます」との書き込み。「どんな仕事ですか? 金沢市から行きます」と返してメールアドレスを載せると「簡単なプロフィールと電話番号を教えてください」とすぐメールが届いた。
 「掲示板の仕事は初めてですか?」。非通知設定で電話をしてきたのは、二十代前半ぐらいの若い男。「ええ。わけあって近々まとまったお金が必要」と答えると、「ぶっちゃけ詐欺です。こういった掲示板に載っている仕事は大体詐欺。受けです」と、淡々とした口調で明かした。「受けなどではない」と書かれていたが、事実は違った。
 報酬はだまし取った現金の10%か五万円。交通費は全額支給。スーツを着てビジネスバッグを持ち、午前十時に東京都内まで来るよう指示された。応募する者の居住地はどこでもいいようだ。実際、受け子は関東出身ばかりではない。
 運転免許証と住所が明記された公共料金の領収書の写真をメールで送るよう指示してきた。理由は「現金を持ち逃げする人もいるので」。応じた場合「名前も住所も知っている」と犯行に加担するよう脅されたり、個人情報を勝手に偽造免許証の材料にされたりと、悪用される可能性がある。
 記者がためらうと、「びびってんじゃねーよ!」と急に声を荒らげた。続けて「リスクもなくて一回に何万円の仕事があるわけねーだろ! 確かに捕まったら実刑くらうけど、急ぎで金が必要なんだろ?」とまくしたてて断らせない。
 「やはり明日は…」と伝えても「いつならいい?」と会話を終わらせない。「仕事は月から金まである」。会社員や公務員を装うから、平日だけなのだろう。「大丈夫だって。俺らだって、あなたに捕まってもらっちゃ困る」。穏やかな口調を織り交ぜ、正常な判断をさせないようにした。
 捜査関係者によると、近年は、掲示板で仕事を見つける受け子が多い。指示役らの素性を知らされることがない「トカゲのしっぽ切り」要員。だまし取った金は、組織の背後にいる暴力団の資金源になっているとみられる。