重機の運転免許を生かして災害現場の復旧に尽くす女性ボートレーサーがいる。浜松市在住の松瀬弘美さん(47)。五日で発生から一カ月を迎える九州北部の豪雨でも、大きな被害が出た福岡県朝倉市杷木(はき)地区に赴き、土砂の運搬などに汗を流した。「明日はわが身。いつかは自分たちが助けてもらうかもしれないのだから自分も助けに行く」
 豪雨から十二日後、同地区のボランティア拠点で立ち尽くした。「どこから手をつければいいのか」。辺り一帯は土砂にまみれ、至る所に流木が横たわっている。「それでもやらなくちゃいけない」と気を取り直した。むせ返るような暑さでTシャツはびっしょり。来る日も来る日も重機で大量の土砂を掘っては運んだ。
 最初に被災地のボランティアに携わったのは二〇一一年の東日本大震災のとき。震災の影響で多くのレースが中止になり、時間を持て余していた。先輩レーサーが被災地に向かう姿を見て、「自分も行ってみようかな」と福島県へ。飼い主のいなくなった犬や猫の世話を手伝った。
 その後、被災地に重機を持ち込み、豪快に復旧に力を貸すボランティア団体「DRT JAPAN」の活動に興味を持った。「手作業で運ぶ土砂の何十倍もの量を運ぶことができる」と、掛川市の自動車学校で必要な免許を取得。今ではクレーン車、ダンプカー、パワーショベルなど、幅広く乗りこなす。
 ボートレースでは、スタートの際のフライングを重ねると、出走停止となり、しばらくレースに出場できない。その“フライング休暇”を利用して被災地に赴く。「フライング休暇中は無収入。(フライングに)なりたくてなってる訳ではないので複雑…」と苦笑い。被災地では「人手が足りて助かるけど、そんなにレースを休んで大丈夫?」と心配されることもあるという。
 これまで一四年の広島土砂災害や、鬼怒川の堤防が決壊した昨年の関東・東北豪雨、熊本地震などの復興に携わった。その度に「静岡県がこうなるかもしれない」と思う。家には、ヘルメットや長靴が入った被災地専用のスーツケースがある。「なるべく、使いたくないですよね」。被災地への思いを胸に秘め、十二日から地元・浜名湖で始まるレースに臨む。
(鎌倉優太)
 <九州北部の豪雨> 7月5日昼ごろから夜にかけ、福岡県や大分県を襲った記録的な大雨。筑後川流域を中心に河川の氾濫や土砂崩れが発生し、多数の死者、行方不明者が出た。九州の北側に停滞した梅雨前線に向かって南西から非常に湿った空気が流れ込み、積乱雲が連続発生して「線状降水帯」を形成、局地的な大雨が長時間続いた。