広島に原爆が投下されて六日で七十二年−。二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故をきっかけに、広島で被爆した自らの体験を長い沈黙を経て語りだした男性を題材にした紙芝居が、県庁の十九階展望ロビーで上演された。原爆の恐ろしさを語り継ぐという誓いを込めて実行委員会が実現させた。
 紙芝居は絵本「ヒロシマの少年じろうちゃん」がベース。絵本は作者の山田みどりさん(東京都豊島区)が兄樋口次郎さん(横浜市港北区)の実体験から書き海外でも紹介されている。
 樋口さんは多くの級友たちが亡くなる中、生き残ったことに罪の意識があり、口を閉ざしてきた。原発事故の報道に「原爆がどんなにむごいものであるかと体験した者が多くの人に伝えなければいけなかったのだ」と考えるようになり、当時の模様を話し始めた。
 県原爆被災者友の会、県生協連、NPOはだしのゲンをひろめる会(金沢市)など七団体でつくる実行委が紙芝居化を計画。山田さんらも了承した。
 紙芝居は元小学教諭野間成之(しげゆき)さん(76)が、十七日まで県庁展望ロビーで開いている「平和のパネル展」に合わせて披露した。
 野間さんは「(樋口さんは)大変つらい思いをされた。すごい決心だなと思う。お声をかけていただければ、どこへでも上演に行きたい」と話す。
 紙芝居上演を提案した県原爆被災者友の会の西本多美子会長(76)は「私たちは県内の体験者に取材してDVD『この空を見上げて〜石川・被爆者たちの証言〜』を作った。ひどい体験も語らないと、次の世代に伝わらない」と訴える。
 山田さんは絵本出版後に東京新聞(中日新聞東京本社)の取材に「兄は被爆を語るまでに七十年近くかかった。戦争は人の心も壊す。二度と戦争なき世を、との思いが私たちきょうだいの願い」と答えている。 (沢井秀和)