輪島の漆芸家ら「日本人の原点伝える」
 石川県の奥能登地方に伝わり、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「無形文化遺産」である農耕儀礼「あえのこと」を題材にした紙芝居が、十一月下旬にオランダで披露されることになった。現地の古都ライデンで開かれる「現代日本漆芸展」に合わせた交流会で、紙芝居として海外デビューする。(沢井秀和)
 上演するのは、市民団体「日本の心・新たな創造会議」の世話人で漆芸家の高名秀人光(ひでみつ)さん(61)=同県輪島市鳳至町稲荷町=と妻の由美子さん(59)、高岡関野神社(富山県高岡市)禰宜(ねぎ)の酒井晶正さん(59)。
 三人は「あえのことは、目に見えない田の神さまや自然を敬い、その恵みに感謝してきた日本人の原点。その心を世界に少しでも伝えたい。生活に根ざした日本の漆文化も広めたい」と意気込んでいる。
 高名さんらは、あえのことを伝承してきた石川県珠洲市若山町の故田中牛雄さん宅を十年余り前から毎年訪問。春から冬まで田んぼを守ってきた田の神を田んぼからお迎えし、漆の膳に料理を盛りつけ、もてなす様子を描いた紙芝居を二〇一四年に作った。
 紙芝居では豆腐で作ったげたを履き、つえをついている田の神の夫婦があたかもそこにいるように、かみしも姿の主人が案内する様子が温かく表現されている。昨年は日本語、英語、フランス語、モンゴル語の絵本も制作した。今回は紙芝居の箱を新調した。
 交流会は、漆芸展が催されるライデンの日本博物館「シーボルトハウス」で計画されている。現地の漆芸作家、日本と交流している関係者らを前に、日本語と英語で紙芝居を披露する。
 漆芸展は、東京芸術大の三田村有純・名誉教授(67)の呼びかけで、高名さんら全国の漆芸家十一人の作品を九〜十一月に紹介する。ふすまサイズの越前和紙に漆絵で桜の木を描き、オランダの人々に願いごとを和紙の花びらに書いて貼り付けてもらうことも計画されている。
 あえのこと 米を収穫した後の12月に田んぼから田の神を迎え、耕作前の翌年の2月に田んぼに送り、豊作を祈願する。奥能登の家々で伝えられてきたが、次第に姿を消しつつある。国の重要無形民俗文化財。2009年にユネスコの無形文化遺産に登録された。