夜空を彩る花火師から、夜の街を守る警察官へ−。異例の転職をした警察官が、岐阜市の西柳ケ瀬交番に勤務している。その人、安田哲治巡査長(33)は「どちらも、一発勝負の世界。失敗は許されない」と気を引き締める。業種を変えても、人々の笑顔を明るく照らそうと、街頭に立つ。
 ネオン街の端にある同交番は、昼より夜の方が仕事量が多い。酔客の介抱、いさかいの仲裁、家出人の捜索…。安田さんは「殴り合いの制止が遅ければ、市民が死ぬかもしれない。現場への急行を心掛けています」と精悍(せいかん)な顔で語る。
 大垣市出身。大学卒業後に働いた肥料の営業職は、水があわず、二年で辞めた。ハローワークで見つけたのが、自宅近くの「高木煙火店」の求人票。「発炎筒でも作っているのかな」と面接に行くと、高木政幸社長(58)から花火店と知らされた。
 「面白そう」と思い、二〇〇九年十一月に入社。火薬の配合や打ち上げなど、一連の仕事を教わった。花火大会に行けば、歓声や拍手が打ち上げ場まで聞こえる。「反応がじかに感じられる」と、花火師生活は充実した。
 転機は、一一年の東日本大震災。仕事で訪れた千葉県で被災し、一刻も早く岐阜に戻ろうと、渋滞する高速道路に乗った。すると、ガラガラの対向車線を、赤色灯を回した緊急車両が次々と東へ向かって行った。「すげえな」。危険を顧みない姿に思わず、あこがれの声が出た。
 実は安田さんは、大学卒業前と煙火店入社前の二度、県警の採用試験を受けて、落ちている。その後、結婚した妻(31)にも勧められ、三度目に挑戦した試験で合格。四年間の花火師生活に終止符を打ち、一三年十月に二十九歳で転職した。
 同期四十三人の中で二番目の高齢。それでも「(警察に)入るのは全然遅くない。むしろ、社会経験を生かせます」ときっぱり答えた。
 今も時折心に浮かぶのは、高木社長の「打ち上げた花火だけを見ているな」の言葉。「視野を広く持て」という意味で、事件や事故現場での仕事にも通じる。警官の仕事には、花火のような派手さはないが、「花火師と同じように、繊細な仕事をしたい」と思っている。
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 県警は十五日まで、採用試験の申し込みを受け付けている。受験資格があるのは一九八二年四月二日以降に生まれた人。約八十人の採用を予定する。(問)県警本部警務課=058(271)2424 
 (水越直哉)