金沢で会社設立
 金沢市土清水の主婦中谷アンギルマさん(44)は昨年、自宅で翻訳や国際交流を手掛ける会社を設立した。中国・内モンゴル自治区出身。中学から大学時代まで日本語を学び「人を大切にする日本らしさ」にほれ込み、金沢に来て十一年。「これまでの経験やネットワークを生かして地域社会に役立ちたい」と考えている。(督あかり)
 草原が広がる内モンゴル自治区で生まれ育った。日本との出合いは中学時代。外国語教育は日本語のみで、テストで百点を取ると先生から富士山や桜の図柄のはがきがもらえるのがうれしかった。「日本の景色はすごくきれい。いつか行ってみたい」と思い、大学でも日本語を学び続けた。
 中谷さんは、中国のメディアで五年働いた後、北京で松下電器産業(現パナソニック)の求人を見つけて応募。動機は「創業者の松下幸之助氏に憧れていたから」。現地で貿易や翻訳の仕事をしてきた。
 松下氏の「利益を求めるより、人の役に立ち、感謝する気持ちを大事にする経営哲学」に共感した。「日本人は勤勉でやさしく、相性が良かった」と話す。
 二〇〇四年に大学院進学のため来日し、二年後に結婚。夫の実家がある金沢に来て、昨年で十年たった。小学生の長女と長男がおり、子育ての真っただ中だが「また社会の第一線で働き、地域の役に立ちたい」と開業した。
 自らも翻訳経験があり、中国語や英語、韓国語、フランス語などを母語とする石川県内の翻訳家十人に業務を委託し、仕事を始めた。強みはネーティブの品質。県内の観光施設や百貨店の館内放送や、テレビ番組の字幕作りなどを手掛けてきた。国際交流の支援やホームページ制作も請け負う。
 「まだ全てが始まったばかり。将来的に小さなオフィスを持ったとしても、人とのネットワークを広く持ちたい」と中谷さん。子育て中の人が働きやすいように、やりとりはメールやスマートフォンアプリを活用している。「遊牧民は物を持たないのが信条。のびのびと自由に働けるのが一番ね」とほほ笑む。
 社名は「オフィス アズィネ」。母語モンゴル語の「祝福」にちなむ。ロゴは金沢水引と伝統的な「叶(かのう)結び」のイメージだ。モンゴルには「相手への感謝を祝福で表しましょう」という格言がある。「周りが幸せになれば、自分もよりハッピーになれる。お客さんの思いをかなえる存在でありたい」