5打数3安打1打点の活躍で、松商学園の初戦突破に貢献した井領大輔選手(三年)。憧れ続けた兄と同じ夏の大舞台に立ち、兄が届かなかった勝利の喜びをかみしめた。
 九年前の夏、松商学園の選手として、夏の甲子園でプレーした兄・翔馬さん(25)=当時二年=の背中を追い掛け、同校に入学した。翔馬さんは卒業後、プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグ「信濃グランセローズ」の野手として、約五年間活躍した。
 現在は、二人とも実家のある上松町から離れ、別々に暮らしているが、顔を合わせればキャッチボールをしたり、翔馬さんが井領選手の打撃フォームを見てアドバイスをしたりする。井領選手にとって翔馬さんは、小さい頃から「憧れの存在」だ。
 県大会で自慢の俊足を生かして9盗塁、11得点を記録し、決勝では勝ち越しの適時打を放ち、チームを甲子園に導いた。憧れだった兄は、いつしか超えたい存在にもなっていた。
 初戦のこの日、バットを握る手には、白色のバッティンググラブがはめられていた。「自分の代わりに、一本打ってほしい」。無安打で夏の甲子園を終えた翔馬さんが贈った手袋だった。
 応援に駆け付けた兄がスタンドで見守る中、二回と七回にバント安打を成功させ、八回には真ん中低めの直球をフルスイング。中堅手の頭上を大きく越える二塁打となり、打点も記録した。
 翔馬さんは「あの一本は最高だった。足を生かした弟らしい野球をしてくれた」と誇らしげ。「ヒットを打って、一勝できた。兄を超えられたと思う」。はにかむ井領選手の顔が、たくましく映った。

 (水田百合子)