全国高校野球選手権は第三日の十日、兵庫県西宮市の甲子園球場で一回戦があり、第一試合で石川県代表の日本航空石川が木更津総合(千葉県代表)と対戦。最終回に3点差をひっくり返す逆転劇を演じ、6−5で競り勝って二回戦に駒を進めた。
 航空石川は一回に先制したが、二回に逆転を許し、四回にも追加点を奪われて一時は4点差に。大会注目の大型左腕山下輝投手(三年)に、抑え込まれる苦しい展開が続いた。
 終盤の八回に1点を返し3点差で迎えた最終回。1点を取り、さらに三番原田竜聖選手(二年)の2点適時打で同点に。この日無安打だった四番の上田優弥選手(同)が勝ち越しの左前適時打を放つと、球場は大歓声に包まれた。
 二回戦は、大会第八日の第三試合(十五日午後一時開始予定)で、埼玉県代表の花咲徳栄と対戦する。 (松村真一郎)
県大会の再現 勝負強さは健在
 反撃ののろしを上げたかに思われた八回、主軸で好機をつぶした。もはやこれまでか…。見ている誰もがそう思ったが、ドラマは九回に訪れた。
 航空打線に立ちはだかってきた山下投手。球数は120球に迫っていた。
 先頭の尾畑秀侍選手(三年)が高めのスライダーを狙い澄まし、左越え二塁打で口火を切った。試合前。中村隆監督(33)は右打者は直球、左打者はスライダーを狙うよう指示。変化球は予想以上に鋭く、七回以降は直球狙いに切り替えた。その中で、左打者の尾畑選手は「変化球の方が得意」と狙い球を変えなかった。
 続く兼田鳴海選手(同)も三遊間を抜き、無死一、三塁としたが、後続が連続三振で倒れて2死。もう後がない。この場面でも、選手たちの脳裏にあったのは、県大会準決勝、終盤に5点差をひっくり返した星稜戦の逆転劇だった。
 「打たせて取るようになっていたので、疲れが出てきている」。一番安保(あぼ)治哉選手(同)は冷静だった。右前に適時打を放ち1点返すと、二番三枡春樹主将(同)も内野安打で続く。球場の空気が確実に変わり始めた。「絶対に勝てる」。ナインは口をそろえた。
 続く原田選手は、星稜戦で値千金の同点弾を放った八番打者。速球に強く、この日は三番に起用。142キロの直球を振り抜き、同点の走者を迎え入れた。
 試合を決めたのは、この日ことごとく好機をつぶしてきた四番上田選手のバットだった。
 チーム打率は全出場校で最低。だが勝負どころを見逃さず、甲子園に来た。「一致団結して航空旋風を起こす」。大会前、そう胸を張った主将の言葉通り、大舞台でも体現してみせた。