広島に投下された原爆の傷痕が残る被爆ピアノの「里帰り演奏会」(静岡県労働者福祉基金協会主催)が十一日、浜松市中区の市地域情報センターであった。百二十四人が平和を願う音色に耳を傾けた。
 当時の所有者の少女の名前から「ミサコのピアノ」と呼ばれるアップライト型ピアノ。一九三二(昭和七)年に浜松市内の旧日本楽器製造(ヤマハ)工場で製造され、四五年八月六日、爆心地から一・八キロの民家で被爆した。浜松市のピアノ調律師養成所を卒業し、広島市安佐南区で調律師をしていた矢川光則さん(65)が十二年前、ガラス片などで付いた傷を残したまま、音を出せるように修理。所有者から譲り受け、全国で演奏会を開いている。
 この日、矢川さんは「戦争は最大の暴力。核兵器や平和を考えるきっかけにしてほしい」とあいさつした。広島市在住のソプラノ歌手大島久美子さん(49)とピアニスト森須奏絵さん(28)が、朗読や「さとうきび畑」「上を向いて歩こう」など十曲を披露。聴衆の中には涙を流す人もいた。
 いずれも養成所時代の同級生で初めて演奏会に来た、愛知県豊橋市中野町、杉浦政行さん(65)は「良い音というより、味わいのある音」と感慨深げ。袋井市川井の大嶽寿宏さん(64)は「心を動かされる演奏会だった」と話した。
(鈴木凜平)