涙ばかりになってしまった場所に、笑顔を−。東日本大震災で七十七人が犠牲となった南相馬市の萱(かい)浜地区で、七回目となる追悼と復興への願いを込めた花火大会が十二日、開かれた。南相馬市に四年間派遣された島田市職員の杉岡一宏さん(39)は、花火大会を主催するボランティア団体「福興浜団」のメンバーとして、天国に届ける花火を見守った。
 二千発の花火が夜空に色を付け、地元の二千人が訪れた。霧雨の中、赤や青の彩り豊かな花火の幻想的な光が人々を照らした。長女と長男、父母を亡くし津波行方不明者の捜索活動を続ける福興浜団代表の上野敬幸さん(44)は、涙ぐみながら「天国に笑顔を届けられた。今後も続けていけたら」と花火大会を締めくくった。
 周辺の明かりといえば、花火大会のために設営された臨時のテントだけ。かつては住宅が並んでいた萱浜地区は、津波でほぼ更地になっている。上野さんは以前あった自宅横に家を新築し、その周辺で大型連休(ゴールデンウイーク)の時期には菜の花の迷路をつくり、夏には花火大会を開いてきた。
 花火大会の当日、杉岡さんは福興浜団のTシャツを着て、花火を撮影しようとカメラを構えていた。二〇一二年四月から計四年間、島田市から南相馬市財政課に派遣された。三年前からは同団の一員として、週末に津波被害のあった家の片付けや捜索活動を手伝った。今は被災地で働いた経験を生かし、危機管理課で防災の仕事に携わっている。
 南相馬市を離れたが今回も、設営準備に参加した。「たとえ何年たっても、心変わりすることはない。多くの人が亡くなった場所で笑う私たちを見て、被災した人たちが安心してくれるかもしれない。力になりたい」と話した。
 今年二月には、浜松市中区の映像ディレクター、笠井千晶さん(42)が上野さんを主人公にしたドキュメンタリー映画「Life」を公開。福島第一原発事故の陰に隠れてしまった福島県の津波被害を伝えている。東海地方からは豊橋ライオンズクラブ(愛知県豊橋市)が花火大会の資金を援助するなど、支援の輪は広がる。
 南海トラフ巨大地震、東海地震の被害が懸念される静岡県。上野さんは「震災は忘れてもいいが、教訓を学んでほしい。もし災害で人が亡くなったら、家族の死が無駄にされたような気持ちになるから。追悼花火を見て、少しでも考えてもらえれば」と呼び掛けた。
(相沢紀衣)