鉄道運輸機構 県内で試工
 北陸新幹線の敦賀延伸に伴う橋りょうなどの工事に、構造物を劣化させるアルカリ骨材反応を防ぐ新手法を使ったコンクリートが採用される見通しとなった。鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)は既に石川県内で試験施工しており、将来的にすべての整備新幹線の工事で使われる可能性がある。新手法を考案した金沢大の研究者は「適切に維持・管理すれば、百年は劣化に耐えられる」と説明する。(沢井秀和)
 北陸地方では、この反応を起こしやすい安山岩の砂利を多く使う上、海岸沿いでは塩害もあり、国や自治体が建てた構造物には強度や耐久性の不足が指摘されているものもある。金大などは、二〇一五年三月に開業した北陸新幹線の富山県内の構造物でひび割れを確認している。
 新しい手法は、石炭の燃焼時に出る細かな粒子の灰を使ってコンクリートを造る。コンクリート内のアルカリ性水溶液が灰の水和物に取り込まれて固まるため、アルカリ骨材反応が起きにくい。飛散する灰を用いるという意味で「フライアッシュコンクリート」と呼ばれている。
 鉄道・運輸機構は今年三月、土木工事のあり方を定めた「標準示方書」にフライアッシュコンクリートの標準配合を初めて明示。北陸地方のアルカリ骨材反応の抑制対策として明確に打ち出した。機構は「北陸ではフライアッシュの適用が推進されていたため」と理由を説明する。
 これまではアルカリ骨材反応はアルカリ量の制限で対応してきた。石川県能美市西任田工区の高架橋で既に試験施工しており、その評価を踏まえ本格採用の道が開かれる見通しだ。
 こうした動きは、北陸電力が石川県七尾市と福井県敦賀市の火力発電所で石炭を燃焼した際に発生する粒の細かい灰を集じん機で採取する態勢を整えたことも追い風になっている。
考案の金沢大教授 研究30年
 新手法によるコンクリートが「国家プロジェクト」に採用される方向となり、三十年にわたり研究してきた金沢大の鳥居和之教授(64)は感慨ひとしおだ。
 北陸では、アルカリ骨材反応で劣化が進み、二十〜三十年後にはコンクリートの中の鋼材が切れて強度が保てなくなると推定される構造物がある。これらの現状を指摘し、訴え続けてきた。
 節目となったのは十年前の能登半島地震の復興工事でかかわった能登有料道路(現のと里山海道)の補修。問題の深刻さと対策の必要性を浮き彫りにした。国、自治体や民間の土木技術者らを巻き込んだ研究会を組織し活動を続けてきた。
 三年前には、金大をはじめ、金沢工業大や石川工業高等専門学校、長岡技術科学大(新潟県)、福井大の研究者らで構成し、鳥居教授を責任者とするグループの研究が、国の「戦略的イノベーション創造プログラム」に採択された。三億五千万円の国費が投じられ、五年計画で実証試験を重ねている。
 鳥居教授は「北陸では財源、人材、技術力が不足する中、いかにインフラを維持、管理することが喫緊の課題。だからこそ産学官が一体になって新しい技術を開発できる。一つのモデルケースになればうれしい」と話している。
 アルカリ骨材反応 コンクリートがひび割れし、そこに雨水が入り、膨張、ひび割れを繰り返し、構造物を変形、崩壊させる。コンクリートに含まれるアルカリ性の水溶液が骨材である砂利や砂の成分と反応し、膨張するのが原因。