県が相談窓口 被害者に寄り添った支援必要
 七月に施行された改正刑法で、強姦罪が「強制性交等罪」に変わるなど、性犯罪分野が百十年ぶりに大幅改定された。主な変更の一つは、強制性交等罪、強制わいせつ罪ともに、起訴に被害者の告訴が必要な「親告罪」の規定が削除されたこと。法律上は、被害者の意思にかかわらず加害者を罪に問えることになる。関係者は「被害者の負担が軽くなる」と期待する一方で、「立件の難しさは変わらない」と課題を指摘する。(小坂亮太)
 「今までは加害者に刑事罰を求めるための判断を、被害者がしなければならなかった。相手が親や知人の場合もあり、精神的負担が大きかった」。金沢弁護士会の犯罪被害者支援委員会委員長の浮田美穂弁護士は、改正を評価し「被害をすくい上げられるケースは広がるのでは」と考える。
 一方、捜査関係者の一人は「起訴するには、被害者の協力は不可欠。親告罪でなくなったからといって変わらない」と明かす。裁判になれば起訴状で被害者の氏名が読み上げられ、出廷して被害を証言しなければならないこともある。「加害者に声を聞かせることにもなり、法廷に立つのは絶対に嫌だという人もいる。その心情を無視して起訴するわけにはいかない」と難しさを語る。
 なぜ出廷が必要なのか。浮田弁護士は「多くの場合、性犯罪は密室で起こる。合意の有無や状況で争われると、客観的証拠に乏しければ本人による立証が重要になる」と話す。被害者が捜査段階で警察や検察に話した供述調書があっても、被告人側の同意が得られなければ、裁判で証拠として提出できない。そうなれば、本人の証人尋問を求めざるを得なくなる。
 裁判所が認めれば、被害者の氏名などが伏せられたり、証人尋問を別室からビデオリンクでしたりするなどの配慮はある。だが捜査関係者は「警察、検察、裁判で何度も同じことを話さなければいけない。厳罰化されたとはいえ、容疑者にとっては慎重で、被害者にはいまだ負担を強いる法制度なのかもしれない」。
 このような状況に置かれる性暴力被害者を支えようと、石川県は十月、県女性相談支援センター(金沢市本多町)に相談窓口「パープルサポートいしかわ」を開設。被害者が繰り返し被害を説明しなくても済むよう、県警や県産婦人科医会、金沢弁護士会との間を取り持つ役割を担う。
 県によると、十一月末現在で十四件の相談があった。担当者は「性犯罪の潜在化を防ぎ、なくしていくためには警察などに届け出ることも重要。何よりも被害者の心情に寄り添った支援を続けていきたい」と話す。
改正後 起訴率、大きな変化なし
 法務省がホームページで公開する検察統計によると、全国で扱われた昨年一年間の強姦罪の起訴数は三百七十件で、起訴率は36・1%。強制わいせつ罪は起訴数千三百八件で、起訴率は40・1%となっている。改正刑法施行後を見ると、八月に処理された強制性交等罪、強制わいせつ罪を合わせた起訴数は百二十九件、起訴率38・9%、九月分は起訴数百二十二件、起訴率37・7%と、大きな変化は表れていない。
 石川県内では、金沢市内の駐車場で十代女性に性的暴行を加えたとして、富山県高岡市の男(20)が強制性交等罪の要件で初めて九月に逮捕、十月に起訴された。
 十一月に金沢地裁であった初公判では「脅してはいない」などと起訴内容を一部否認。来年一月の次回公判では、被害者の証人尋問が予定される。
 強制性交等罪 7月に施行された改正刑法で、強姦罪から名称変更された。法定刑の下限が懲役3年から5年に引き上げられたほか、口腔性交や肛門性交も対象となり、加害者、被害者に男女の区別がなくなるなどの変更点があった。