◆「生きる力」 本で訴え
 浜松日体中学・高校(浜松市東区)で講師を務める和田慎市さん(63)=ペンネーム=が、教員生活四十年の経験を基に、いじめ対策を提言する「いじめの正体」を出版した。「絶対にいじめはなくならない」という前提に立ち、子どもの自己解決能力を高める大切さを訴えている。
 和田さんは三十六年にわたり、県内などの公立高校で教諭や教頭として第一線に立ち、進学校や教育困難校など幅広い校種の現場を踏んだ。直面したトラブルは千件近いという。
 それだけに、「人間には好き嫌いや『面白くない』と思う感情がある。子どもがコントロールするのは難しい」と言う。多くの子がいじめの加害者、被害者いずれかを経験するとみる。
 今回筆を執ったのは、二〇一三年に制定された「いじめ防止対策推進法」の実効性にかねて疑問を抱き、全国的に自殺や保護者らとの摩擦が絶えないため。「いじめ問題はさまざまな形態があり心に関わる。法律で定義や対処法を固定してしまうと、問題をこじらせる」と批判する。
 著作では多くの事例紹介とともに、国や教員、保護者ら幅広い関係者に向けて具体的に提言。高校時代に陰湿ないじめを受けた兄(65)が、今も精神障害でヘルパーに助けてもらって生活している実態を明かし、生真面目でおとなしく、被害者になりやすい子どもは早期から把握してサポートするよう呼び掛ける。
 和田さんが危ぶむのは、教員が多忙になり、子どもと向き合う時間が減ってきたこと。保護者が先回りして面倒を見るなどして、子どもの自立心や「生きる力」が弱くなっているとも感じる。
 「『いじめ』という言葉に嫌悪感や拒否反応を持ちやすいが、いじめは誰にでもある身体の成分のようなもの。生きるために乗り越えるしかなく、自己解決力や生きる力を付けさせるのが大切」と話す。
(松本浩司)
◆認知過去最多 「小さなことでも相談を」
 文部科学省の二〇一六年度調査によると、静岡県内のいじめの認知件数は、公立小学校で四千八百九十三件、中学校で二千六百五十四件、高校は九十九件、特別支援学校は二十五件で、いずれも前年より増えた。
 今回の調査から、けんかやふざけ合いなど軽微なケースも積極的に把握するようになり、件数は増加傾向に。小中学校は、いじめの定義を変更した一三年度以降で最多となった。
 県教委の増田三保子・人権教育推進室長は、「自分で解決する力を持っていても、悩んで、その力がなくなってしまうこともある。周りに味方はいっぱいいる。小さなことであっても、自分が悪いと思わず、24時間子供SOSダイヤル=電(0120)078310=に相談してほしい」と話す。
 <いじめ防止対策推進法> 大津市の中学2年男子がいじめを苦に命を絶った2011年の事件を受け、議員立法で制定された。生命や心身に重大な被害が生じた疑いがあるケースや、不登校などを「重大事態」と定義。学校や教育委員会による調査を義務付けたが、遺族が学校や教委に不信感を募らせることも多い。国のいじめ防止対策協議会は16年11月、重大事態の具体例を明示するよう国に求めた。