◆母親手記、電通の体質批判
 広告大手電通の新入社員高橋まつりさん=当時(24)、静岡県出身=が二〇一五年十二月に長時間労働の末に自殺してから二十五日で二年となり、母幸美さん(54)が手記を公表した。電通の体質を改めて批判し、「私たちのような不幸な親子を増やさないために経営者や従業員、すべての人の意識を変えて、日本の社会全体で働く人の命と健康を守ってほしい」と訴えた。
 幸美さんは昨年十月にまつりさんの過労自殺を公表。電通は午後十時以降の全館消灯などに取り組み、今年七月には労働時間の削減を目指す基本計画を策定した。だが幸美さんは「いまだに社員は『厳しい上下関係や深夜勤務を乗り越えて成長した』という成功体験にとらわれ改革は遠く難しい」と指摘。「非常識な文化や成功体験を捨てて本気で実行に向かわなければ、また不幸な出来事を繰り返す」とした。
 法人としての電通が罰金五十万円の有罪判決を受けたことには「人の命が喪(うしな)われているのに責任があまりにも軽すぎる」とし、罰則強化や法律に違反し過労死を出した会社名の公表を求めた。
 政府は今年三月、残業時間の上限を「最長でも月百時間未満」とする規制導入を柱とした働き方改革実行計画をまとめ、来年は関連法案の国会審議が始まりそうだ。幸美さんは「過労死ラインを超える長時間労働を認めることになり疑問が残る。労働時間規制の例外の拡大は絶対にあってはならない。眠らないで生きられる人間などいるはずない」と批判した。
 「大切なまつりを失った悲しみと苦しみは一生消えることはない」。まつりさんの死は働き方改革へとつながったが、幸美さんは「どうして生きていた時にできなかったのか。実現していたら、まつりは生きて自分の夢に向かって社会に貢献していたでしょう」と悲痛な思いをつづった。