◆広がる「柔軟な働き方」
 静岡銀行(静岡市葵区)やTOKAIホールディングス(同)など県内の大手五社が、働き方改革として「在宅勤務制度」の導入を検討していることが、本紙の働き方改革に関するアンケートで分かった。遠州信用金庫(浜松市中区)など二社は既に取り入れた。長時間労働を防ぐ「勤務間インターバル制度」も製造業を中心に導入の動きがある。人手不足が続く中、柔軟な働き方を重視する経営が県内でも広がりつつある。
 在宅勤務制度は子育てや介護をしながら仕事を続けられる利点があり、幅広い業種に広がりつつある。
 遠州信金は二〇一六年秋から始めた。顧客の個人情報を扱わない事務管理の担当者らを対象に、自宅で作業をするためのパソコンを貸与。ログインとログアウトの時刻から在宅時の勤務時間を管理している。
 導入を検討している大手五社のうち、静岡銀行では働き方改革プロジェクトチームを設置。残業の上限や削減目標を設定するなど人材重視の姿勢を強化している。静岡鉄道(静岡市葵区)も改革に積極的で、二〇一八年度をめどに導入を目指す。
 仕事を終えた時刻から、次に仕事が始まる時刻まで一定時間を空ける勤務間インターバル制度の導入を検討しているのは、自動車部品製造の二社だった。
 自動車用エンジンバルブ製造のフジオーゼックス(菊川市)は昨年十月、設計や開発、総務部門の従業員らを対象に制度を取り入れた。労使間の話し合いで、少なくとも終業から始業まで八時間以上を空けるように決めた。人事担当者は「まずは試験的に運用しながら、インターバルの時間を延ばすことも今後検討したい」と説明する。
 他業種では、マックスバリュ東海(長泉町)が一六年春から導入し、全従業員を対象に十時間以上空けるようにしている。
 アンケートは昨年十一月下旬から十二月中旬にかけて、県内に本社や主要拠点を置く上場企業など六十社に送付し、75%の四十五社から回答を得た。
◆製造業、過労に歯止め
 県内主要企業が在宅勤務など柔軟な働き方の導入を進めている背景には、「人手不足」がある。本紙が行ったアンケートでは、約八割の企業が人材確保に「困っている」と回答している。人口減少に伴い人手不足が常態化する中、企業は多様な働き方を積極的に取り入れることで、人材の確保や流出防止につなげようとしている。
 景況感の回復に伴って企業の採用意欲が高まり、有効求人倍率はバブル期並みの水準に達している。新たな人材確保が難しくなる中、社員が育児や介護などを理由に退職してしまうことは避けたい。このため、安心して働き続けられるような職場環境を整える必要がある−。在宅勤務制度などを取り入れる企業の担当者から聞こえるのはこうした声だ。
 アンケートでは、九割の企業が「働き方改革を進めている」と回答。在宅勤務など育児・介護と仕事を両立できる制度構築を模索する企業も出ているが、「当事者となるまで理解が進まない」「他の社員への気遣いから制度利用をためらう」といった課題を挙げる企業もある。
 また製造業では、一部業務で生じがちな長時間労働を抑えようとする機運も高まっている。自動車部品メーカーでは、設計や開発部門で製品の納期を遅らせないように担当者が深夜まで残業することがある。
 勤務間インターバルは、こうした長時間労働による過労に歯止めをかけようとする仕組みだ。全国では通信大手KDDIなど大企業を中心に導入され始めているが、県内でも徐々に動きが広がっていきそうだ。
 アンケートでは「業務の無駄を省く改善による生産性の向上」を重視するとの回答も目立った。企業は仕事量だけでなく質も含めて、従来の働き方を見直そうとしている。

(西山輝一)
 勤務間インターバル制度 従業員が十分な生活や睡眠の時間を取れるように、仕事を終えてから次の始業までに一定時間を空ける制度。欧州連合(EU)の加盟国では11時間を確保するよう法律で義務づけている。政府は昨年3月に残業時間の上限規制を柱とする働き方改革実行計画をまとめ、関連法案を今年の国会に提出する予定。勤務間インターバルは、努力義務として企業に導入を促す内容になる見通し。