◇記者コラム「Free Talking」

 サッカー日本代表が20日に2026年W杯北中米大会への出場を決めた。会場の埼玉スタジアムには5万8137人が詰めかけ、2―0でバーレーンを下して8大会連続8度目のW杯切符をつかむ瞬間を見届けた。試合は民放地上波で生中継され、ビデオリサーチによると視聴率は関東地区で世帯平均21・7%、個人平均14・3%。多くの人が歓喜の“目撃者”となった。

 「本当、ホームで決められて良かったです」。狂喜に揺れる大入りの客席を前に、そうこぼす日本協会関係者の表情にはうれしさよりもむしろ安堵(あんど)が色濃くにじんだ。3年前の出来事を知るだけに、聞かずともその理由は分かる。

 すぐ脳裏に浮かんだのが、前回のW杯カタール大会出場を決めた22年3月のアジア最終予選のオーストラリア戦。放送権料の高騰もあり、同大会の最終予選から敵地での試合は地上波、衛星放送でもテレビ放映はなくなった。日本国内でのアウェー戦の視聴は有料の映像配信サービスに頼るしかなかった。

 W杯出場が懸かった試合がテレビ中継されない事態に、日本協会の田嶋幸三会長(当時)は「自腹を払ってでも地上波でできないかと考えている」とまで言った。結局、時差2時間のシドニーで日本がカタール行きを決めたのは、お茶の間で楽しめるゴールデンタイムの日本時間午後8時ごろ。三笘薫の劇的2ゴールもあり、協会内では「痛恨の記憶」として今も刻まれている。

 翻って今回の最終予選。日本代表の快進撃や他の5チーム同士のつぶし合いのおかげで、6試合を終えた昨年11月の時点で日本は地上波中継がある3月のホーム2連戦で予選突破を決めるのはほぼ確実となり、「出場決定」の大一番がアウェー戦になるという“懸案”はひとまず棚上げが許された。

 バーレーン戦から一夜明けた21日。森保一監督は、日本協会の宮本恒靖会長らと臨んだ記者会見でW杯優勝という壮大な目標に向けて「日本中の関心事としてサッカーを見ていただくことが選手たちのエネルギーになり、パフォーマンスに直結する」と語った。テレビ放映の問題は一例にすぎないが、国民の間に共闘の輪を大きく広げるためにも日本協会にできることはまだまだあるはずだ。(サッカー担当・唐沢裕亮)