◇コラム「ゴルフ米ツアー見聞録」

 米国を主戦場に戦い、5年目を迎えた畑岡奈紗が米ツアー5勝目をつかんだ。随所に強さの光るプレーを見せる一方で、精神面でも大きな成長を遂げている。

 最終18番、1メートル弱のウイニングパットを慎重に沈めても表情は硬いまま。キャディーのグレッグ・ジョンストンに肩を抱かれて、ようやく安堵(あんど)の笑みを見せた。

 今季2勝目を挙げ、賞金ランキングは2位に浮上した。しかし、畑岡がこれまで過ごしてきた時間は順風満帆ではない。今季だけでも何度も打ちのめされている。

 春先は「どん底に近い状態だった」と言うほど、大きなショット不振に陥った。やっと復調して臨んだ6月の全米女子オープン。悲願のメジャー初勝利を目前にしながら、笹生優花にプレーオフで敗れた。

 その悔しさを糧に翌7月、マラソンクラシックを制した。「さあいよいよ次は東京五輪」と気合を入れて乗り込んだが、結果は9位。「長年の目標だった金メダルを達成できなかった。もう本当に悔しかった」と再び落ち込んだ。

 「まだメジャー優勝という目標もある。ひたすら練習するしかない」と自身を奮い立たせるも、五輪直後は「4、5日練習しなかった」と苦しかった胸中を吐露した。それから1カ月後の今回、ミンジ・リー(オーストラリア)、ダニエル・カン(米国)といったメジャー覇者を相手に競り勝った意味は大きい。

 落ちてははい上がる精神力が畑岡の強さだ。当の本人は「いや、私もまだまだ分からないことだらけ。本当に苦しいときも『これは試練だ!』と思ってやっている」と実に自然体。来年はメジャーの5大会を控え、3年後にはパリ五輪が待っている。まだまだ22歳。重ねてきた苦労を優しく包み込む大きなご褒美が、この先に待っているに違いない。(全米ゴルフ記者協会会員)