8月23日、〈R18〉指定の衝撃作、脚本家 荒井晴彦監督作品「火口のふたり」が、武蔵野館ほか全国公開される。

同時に、本作でも音楽を担当している下田逸郎が、「脚本家 荒井晴彦が映画の中に流し込んだ 下田逸郎の唄たち」というCDをリリースした。

1970年の1年間、東京キッドブラザース「ゴールデンバッド」ニューヨーク公演に音楽監督として参加した後、日本に帰って来て、翌71年、23歳の下田は、レコード・アルバム「遺言歌」を残して、再び、ニューヨークに旅立った。

3年後、日本に、白人女性歌手ビッキー・スーと黒人男性歌手アレクスを連れて帰って来て、アルバム「飛べない鳥 飛ばない鳥」という話題作を発表した。のち、ソングライターとして、「踊り子」、「セクシー」、「ラブホテル」など、数々のラブ・ソングをヒットさせ、ラブソングの元祖などといわれたが、下田逸郎のラブソングには、生きていること自体を体感する「愛」の行為には、必ず「死」の匂いがあることを示唆している。

数々の作品で、男と女のエロティシズムを表現して、キネマ旬報脚本賞を5度も受賞している脚本家 荒井晴彦と下田とは、根の部分で絡まり合う表現者同士として、必然的に繋がることになる。

荒井作品「ダブルベッド」(1983/「ラブホテル」)、身も心も(1997/「セクシィ」)、皆月(1999/「早く抱いて」)、「海を感じる時」(2014/「泣くかもしれない」)、「さよなら歌舞伎町(2015/「月のあかり」)等に、下田のラブソングが、まるで、脚本の一部のようにはめ込まれ光を放っている。

本作「火口のふたり」では、7年前別れたふたり、賢治(柄本佑)が直子(瀧内公美)の結婚式に出るために再会し、そこから、互いの身体の言い分を見つめ抜きさしならない関係になって行くのだが、別れる前のふたりのセックスと愛の日々を写したモノ黒写真のアルバムがめくられて行く場面が、タイトルバックとなり、そこに、「早く抱いて 何をためらっているの/うまく抱いて 何をためらっているの/間がずれると はがれ落ちるの/眺め続けた恋は」と下田の「早く抱いて」が、伊東ゆかりの声で流れてくる。言葉とメロディが、ふたりの過去と今を繋ぐ凧の糸のように見えて、冒頭からずしっと胸に来た。

ふたりが身体の言い分と限られた時間の狭間に揺れる場面では、「よく泣いたね よく笑ったね/過ちをくり返して いっしょに生きよう」と「この世の夢」が、エンドタイトルの富士山が溶岩を吹き出しながら噴火する絵(カット)にかぶせて、「紅い花が咲いて 白い霧が晴れて/青い空が覗き あなたがそこにいる/とっても気持ちいい とっても気持ちいい」と「紅い花咲いた」が、下村陽子の唄で流れる。歌と一体となって、「世界の終わり」を旅する賢治と直子の求めあう場面が、再生するかのように、永遠に続くかに思えた。

寺本幸司(音楽プロデューサー)

映画『火口のふたり』公開記念アルバム「脚本家 荒井晴彦が映画の中に流し込んだ下田逸郎の唄たち」2019.8.1 発売

日本を代表する脚本家・荒井晴彦を語る上で欠かせない、下田逸郎の楽曲を集めた記念すべき名盤が完成。初ダッグとなった「ダブルベッド」から最新作「火口のふたり」まで、映画と唄が重なり合って生まれた、男と女の不確実で愛しい物語が広がっていく──。

01.早く抱いて/伊東ゆかり02.この世の夢/下村陽子03.紅い花咲いた/下村陽子04.ラブホテル/下田逸郎・広美和子05.セクシィ/石川セリ06.早く抱いて/山崎ハコ07.泣くかもしれない/山下弥生08.月の明かり/下田逸郎・内田勘太郎09.この国の空のテーマⅠ/松口ようこ10.紅い花咲いた/金子マリ11.セクシィ/下田逸郎12.早く抱いて/下田逸郎13.この国の空のテーマⅡ/OAアンサンブル

発売日:2019年8月1日 / 品番:LEAF-017 / 定価:2500円企画:荒井晴彦と下田逸郎 制作:ひとひら工房 絵:堀 晃 写真:野村佐紀子・イジマカオル装幀:菅野昭一 録音・編集:正木 毅

ご購入は「火口のふたり」上映館またはこちらまで。

映画「火口のふたり」8月23日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

脚本・監督:荒井晴彦 原作:白石一文 音楽:下田逸郎 主演:柄本佑 瀧内公美https://kakounofutari-movie.jp/