(C)2020 映画「スマホを落としただけなのに2」製作委員会

2020年2月21日から『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』が公開されます。

志駕晃の同名小説シリーズを原作にした第1作『スマホを落としただけなのに』(18)では彼氏(田中圭)がうっかりタクシーに置き忘れたスマホがきっかけで恐怖に陥れられるヒロイン(北川景子)の受難が描かれていましたが、今回は前作で事件解決に奮闘した加賀谷刑事(千葉雄大)を主人公に、その恋人・美乃里(白石麻衣)にふりかかる新たな恐怖が描かれていきます。

まあ、スマホを紛失するなんてよくあることですし、今回の鍵となるフリーWi-Fiも日常的に使ってしまう昨今、そこにつけいる悪の手に気をつけたいと心構えてはいても、思わぬところで危険にさらされてしまうもの……。

人間、生きていると「つい、うっかり」も含めた些細なことから思いもかけない事態に陥ってしまうことがままありますが、映画もまた古今東西そういった事象を好むかのようにさまざまな作品を発表し続けています。

今回はそういった巻き込まれ型の日本映画を、サスペンス・ジャンルの枠に留まることなく何本か紹介していきたいと思います。

電車に乗ってただけなのに!?『それでもボクはやってない』

それでもボクはやってない

電車やバスの中などで起きる痴漢事件がもたらす冤罪の数々は、日常を生きていく中である意味最大級の恐怖ともいえるものではないでしょうか。

本作は無実の青年(加瀬亮)が痴漢の犯人として疑われて逮捕され、裁判にかけられていく非常事態をシリアスに描いた作品です。

驚くべきは監督が『シコふんじゃった。』(91)や『Shall we ダンス?』(96)などアットホーミングなヒューマン・コメディで知られる名匠・周防正行であること。

とある痴漢冤罪事件に興味を抱いた彼は、綿密な調査を踏まえつつ、人権を軽視した現在の日本の警察や司法システムの闇によって冤罪が育まれていく驚愕の事実を映像で明らかにしていきます。

それまで映画における痴漢とは18禁作品の定番みたいなイメージで扱われることが大半だったように記憶していますが、ここで初めて深刻な社会問題として大きくクローズアップされた衝撃や、周防監督ならではの秀逸なデータ感覚を駆使したサスペンスフルな演出の妙も功を奏し、本作はキネマ旬報ベスト1などその年の映画賞を総なめするとともに、ますます複雑&問題化していく痴漢および冤罪事件の数々を見据える際の大きなテキストにも成り得ているように思えてなりません。

周防監督はこの後もコミカル路線と並行しつつ、こうした法や裁判などの矛盾や理不尽を追求した作品を作っていきたいと語っています。

お引越ししただけなのに!?『クリーピー 偽りの隣人』

クリーピー 偽りの隣人

人間、生きていれば大半の人は引っ越しの経験があることと思われます。

新しい家や部屋はどんな様子か? どのような環境の町並みか? そしてお隣さんやご近所さんとの付き合いとかどうなるか……!?

前川裕の小説『クリーピー』を映画化した『クリーピー 偽りの隣人』(16)は、新居に引っ越した元刑事の犯罪心理学者(西島秀俊)と妻の康子(竹内結子)が、不気味な隣人・西野(香川照之)に翻弄されていきます。

ドラマとしては主人公の刑事時代の未解決事件などを絡めつつ、やがて隣人家族の意外な真相などを経て、やがて夫婦は互いに深い心の闇の奥底へと落とし込まれていきます……。

困ったお隣さんに翻弄される映画は古今東西数多くありますが、ホラー&スリラー映画に定評のある黒沢清監督は『悪魔のいけにえ』など先達のジャンル映画にオマージュを捧げながら、隣人の毒に染まりながら日常から非日常の世界へ闇落ちしていく主人公夫婦の不安と恐怖の悲劇をシュールに描きあげていきます。

隣人に扮する香川照之の不気味さは、本当にこんな人が隣に住んでたら即引っ越したくなるほど!

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友達になっただけなのに!?『かしこい狗は吠えずに笑う』

かしこい狗は、吠えずに笑う

人間、普通に生きていれば友達の一人や二人、自然にできていくものではあるのでしょう。

しかし、その友人が実は〇△×だったとしたら……?

『かしこい狗は、吠えずに笑う』(13)は、『3月のライオン』(17)や『麻雀放浪記2020』(19)などの脚本家として知られる渡部亮平が2012年に製作・脚本・監督・編集を務めて完成させた自主製作映画です。

いかつい容貌のせいで周りから「プーさん」とあだ名されて疎まれている美沙(mimpi*β)と、逆に可愛い容貌が嫉妬を買っていじめられるイズミ(岡村いずみ)。

ふたりの孤独な女子高校生は共鳴し合うかのように、次第に親密になり、友達になっていきます。

これだけなら少女たちが織り成す繊細かつ透明感あふれる青春友情映画として讃えたいところで、現に前半の静謐ながらもエモーショナルな感情の描出の数々は印象的。

しかしこの作品、中盤から大きく様変わりしていくのです……!?

以後の展開はかなり意外なものになっていくのでネタバレ厳禁にしておきますが、劇場公開時はインディペンデント映画の枠を超えて、多くの映画ファンのハートを衝撃で撃ち抜きました。

今回、実は一押しの作品として強くプッシュしておきます(まさか配信でも見られるようになっていたとは!)。

論より証拠で、まずはご覧になってみてください!

苗字が佐藤なだけなのに!?『リアル鬼ごっこ』

リアル鬼ごっこ

全国苗字ランキングの上位をぐぐってみると、1位は佐藤、続いて鈴木、高橋、田中、伊藤の順になっていました。

では、その日本で一番多い“佐藤”姓の人間を狩りの獲物のように扱ったら?

全国の佐藤さんからすると迷惑この上ない奇想天外なアイデアで発表された山田悠介のデビュー&ベストセラー小説を映画化した『リアル鬼ごっこ』(08)では、独裁者の命令で佐藤姓の人間を捕まえて死刑にする究極の鬼ごっこが強要されているパラレルワールドに迷い込んだ高校生・佐藤翼(石田卓也)の恐怖の受難が描かれます。

いわゆるデス・ゲームものの一種ではありますが、差別や偏見、またそれらが高じての大量虐殺みたいなものは意外に他愛のないことが理由で実践されることも祟るもので、その伝では本作も荒唐無稽ではあれ、いつどこでこういう理不尽な恐怖がふりかぶさっていくか…といった不安心理が原作をベストセラー化していったのでしょう。

監督はデス・ゲームものの演出や製作に定評があり、最近では学園青春ホラー映画の秀作『がっこうぐらし!』(19)を放った柴田一成。

ちなみにこの映画版、シリーズ化されていて、柴田監督による第2作『リアル鬼ごっこ2』(10)は前作から半年後を描いた続編ですが、『3』『4』『5』(12)は何とB型の人間が標的となる新シリーズ3部作として発表。監督も『アンダー・ユア・ベッド』(19)などの才人・安里麻里にバトンタッチしています。

さらにはTVシリーズ『リアル鬼ごっこ THE ORIGIN』(13)や、原作を一切無視して全国のJKを標的とする園子温監督のダーク・ヴァイオレンス映画『リアル鬼ごっこ』(15)も作られています。

ゾンビに噛まれただけなのに!?『トウキョウ・リビング・デッド・アイドル』

トウキョウ・リビング・デッド・アイドル

いやいや、ゾンビに噛まれたら、もうアウトでしょう。

しかし『トウキョウ・リビング・デッド・アイドル』(18)のヒロインは違います。

舞台は現在の東京によく似た街ですが、実はゾンビが害虫のように徘徊していて、見つけたら即抹殺するように法で定められているパラレルワールドとしての世界観とみなしてよいでしょう。

そんな中、アイドルユニット“TOKYO27区”メンバーのひとり神谷ミク(浅川梨奈)はライヴ終了後に突然現れたゾンビに噛まれてしまいました。

ゾンビ化するまでのタイムリミットは72時間。

体制に捕らえられて隔離されようとしたミクは逃亡し、何とかゾンビ化する前に生き延びる道を模索していくのですが……。

アイドルとゾンビとバイオレンス・アクションを融合させたプログラム・ピクチュアではありますが、当時アイドル・ユニットSUPER☆GIRLSのメンバーとして活動し、現在は女優として「2019年映画&連ドラ出演・主演数ランキング」「20代以下女優主演数ランキング」(ともに『日経エンタテインメント』11月号にて発表)で第1位に輝きつつ、今も多忙な活動を続ける浅川梨奈の魅力があふれた快作。

またゾンビハンターを演じる星守紗凪の華麗なソード・アクションも特筆事項で、ガールズ・アクションのファンは見逃し厳禁として、これもプッシュしておきます。

監督はTV『ケータイ刑事』シリーズを多数演出した熊谷祐紀と聞いて、大いに納得できるテイストの出来でもあるのでした。

(文:増當竜也)