■「映画音楽の世界」

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みなさん、こんにちは。

「怪盗グルー」シリーズの最新作となる『怪盗グルーとミニオン大脱走』が7月21日からスタートしました。これまでに『怪盗グルーと月泥棒』『怪盗グルーとミニオン危機一髪』、ミニオンを主人公にしたスピンオフ『ミニオンズ』が制作され、いずれも大ヒット。ミニオンのキャラクターが先行してしまい、本来なら主人公であるはずの “怪盗グルー” の存在感が隠れてしまいがちですが、あくまでもシリーズの主人公はグルー。今回もしっかりと良い味わいを出してくれています。

と、いうわけで今回の「映画音楽の世界」は『怪盗グルーとミニオン大脱走』を紹介したいと思います。ちなみに筆者は今回“もはや笑福亭鶴瓶師匠の声に耳が慣れてしまっている”という理由だけで吹き替え版での鑑賞となりましたので、その辺りも絡めつつ…。

シリーズ随一の悪役の魅力!

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シリーズには毎回個性的な敵キャラクターが登場していますが、今回の敵はかつて有名子役だったバルタザール・ブラット。

子役として人気を極めた1980年代のトレンドで身を固めたバルタザールは、成長とともに自身を追放した業界に復讐するため悪の道へと進み“反悪党同盟”のグルーと敵対関係にあります。映画の開始早々バルタザールの見せ場が用意されていますが、これがまぁ、とにかく濃い。そして楽しい。

手始めにマイケル・ジャクソンのヒットナンバー「BAD」のリズムに乗せて見事なムーンウォークやダンスの才能を見せつけてくれるわけですが、このノリと選曲はアラフォー世代にドンピシャすぎて「今の子どもたちついていけるのかな?」と心配になるほどです。

それでも劇場からは大人の声に混じって子どもたちの笑い声も聞こえてきたので、その辺りはさすがの演出力。この後もバルタザールの行くところヴァン・ヘイレンの「JUMP」やa-haの「TAKE ON ME」など80’sサウンドのヒットパレード状態で、音楽×コメディ演出で大人も子どももそろって楽しめるのが魅力になっています。

ある意味主人公であるグルーを超える個性を見せつけてくれているのではないでしょうか。このバルタザール、日本語吹き替え版では松山ケンイチが声優に挑戦していますが、その声はクレジットを見なければ松山ケンイチとは気づかないくらいハマっていて、正直「プロの声優?」と思えたほどでした。

“家族”を描き続けるシリーズ

怪盗グルーのミニオン大脱走 サブ

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さて肝心のグルーですが、こちらにも大きな進展が。バルタザールを逃したことで夫婦そろって反悪党同盟をクビになってしまうというなかなかシビアな展開を迎えてしまい、さらに「悪党には戻らない」と宣言するグルーに見切りをつけたミニオンたちが、グルーのもとを去ってしまいます。

そんな状況の中、生き別れになっていた双子の兄弟・ドルーの存在が発覚。グルーは家族を連れてドルーが暮らす島へと向かいます。正直筆者は予告編の流れをあまり信用しないタイプなので「どうせ実は偽物の兄弟で悪役なんでしょ?」と思っていたら、スミマセンちゃんと本物の生き別れの兄弟ということでして。よくよく考えてみれば、怪盗グルーシリーズの軸にあるのは、グルーが家族を手に入れてく 話でもあります。

1作目ではアグネスら3姉妹を家族として迎え入れ、2作目ではルーシーと結ばれています。これって映画にとって結構大きなイベントだと思うのですが、怪盗グルーシリーズはそんなイベントをさらりと描き上げ、“1作品だけの特殊設定”で終わらせることなくしっかりと次作に反映させているのが特徴でもあります。

そのため本作でもルーシーは前作以上にグルーの家族の一員として描かれていて、1作ごとにグルーの家族が成長、映画的に言うならパワーアップしていることになります。そこで本作で得らばれたのは“兄弟”だったわけです。

家族ができた1作目、家族が増えた2作目、そして家族を取り戻す3作目と形を変えながら、怪盗グルーシリーズは家族がいることの大切さを一貫して観客に伝えていることになります。そう考えると、シリーズ主題歌であるファレル・ウィリアムスの「ハッピー」の意味も自ずと見えてくるのではないでしょうか。本作でファレルは他にも要所で軽快なリズムの楽曲を提供しており、ヘイター・ぺレイラが手掛けるスコアとともに映画の雰囲気を盛り上げているので80年代サウンドとの競演も楽しみの一つ。

怪盗グルーのミニオン大脱走

まとめ

と、いうことでグルーとドルーは再会を果たし、2人の間にあった空白の時間を埋めるように行動をともにし、バルタザールとの決着へとなだれ込んでいるのでその辺りの見事な脚本の運びと結末はぜひ劇場で確認してほしいところ。「あれ? ミニオンズは?」と聞かれそうですが、本作はミニオンたちの魅力にも増して他のキャラクターたちが輝いているので十分に映画は物語ってくれるはず。

ちなみにドルーの声は俳優・生瀬勝久が担当していますが、松山ケンイチ同様にさすがベテラン俳優。ピタリと違和感なく当てはめているのでこちらも“聞き”どころ(字幕版ではグルー役のスティーブ・カレルが2役を担当)。80年代の音楽に彩られ、魅力的なキャラクターと新たな家族の一員が見せる、どの世代も楽しむことができる『怪盗グルーのミニオン大脱走』をお見逃しなく。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)