11月4日(土)より公開の映画『ゆらり』は、舞台、映画、ドラマなどで話題作を多数執筆している脚本家の西条みつとしが自身が主宰する劇団TAIYO MAGIC FILMで上演し、好評を得た舞台作品の映画化。W主演として、岡野真也、内山理名を迎え、さらに実力派俳優が脇を固める注目の作品です。

ゆらり ポスター

■映画『ゆらり』のあらすじはこちらから

民宿の「赤木箱」を舞台に、世代をまたいで3つの家族の愛を描いた本作。そこで、今回は、幼い頃にやむを得ず離れることになってしまった父と娘の再会を演じた、高山直人役の戸次重幸さんと内田瞳役の萩原みのりさんにお話を伺いました。

──家族の愛を描く作品でありつつ、少しSF要素もある不思議なお話ですが、初めて脚本を読んだときの印象はどうでしたか?

萩原:現在・未来・過去のお話があって、文字情報だけだと複雑で「あらら…?」と思いながら、台本を行ったり来たりして。

映像になったとき、どうなるんだろう?って素朴な疑問を持ちながら読みました。完成した映像を見て、こういう映画になってるんだなって、全体像を理解しました。

こういう作品だからこそ、人間が演じて想いが入ることで、深みが出るんだなと思いました。

ゆらり サブ9

戸次:僕も、進んでは戻り、進んでは戻り、といった感じでした。やはり、人が演じたものを映像で見ることで、ひとりひとりの人間の人生として説得力が出るので、「全体像を把握をするのは完成してからでいいんだな。僕らはこの役を粛々と演じていればいいものができる」と思っていましたね。

──お二人が会うのは映画の撮影以来ということですが、写真の撮影中も和気あいあいとお話されていましたね。現場でも、そのような雰囲気だったのでしょうか?

戸次:そこはやっぱり違いました。生き別れの親子という設定なので、撮影の合間にも役を引きずるところはあって。もちろん、必要最低限の会話とかはしますけど、仲良くなりすぎることで影響が出てしまうような作品のときは、時間の過ごし方もデリケートな部分になりますよね。

萩原:親子だけど、その距離感を作っちゃいけないっていう難しさはやっぱりありました。いわゆる普通の親子の役だったら、もっとお話ししていたかもしれないけれど、私は1人で控え室にこもっていたような気がします。

──では、離れていた時間がある親子の距離感なんかを、お2人で詰めていこう、という感じではなかったという。

戸次:瞳の物心がつく前に、父親の高山はいなくなってるわけだから、それを考えると、距離感があったほうが自然だし、変に仲良くなりすぎちゃっても…と。だから、自然の流れで、時間を過ごしていましたね。

──今作は、もともと舞台作品が原作ということですが、そこについて感じることはありましたか?

戸次:いただいた資料から見落としていたのか、実は僕、演じているときは知らなかったんです。その後、インタビューを受けたときに「舞台ならではだと感じたことはあります?」と聞かれて、「…ない」って(笑)。

萩原:私はなんとなくは聞いていましたが、舞台を見たわけでもなかったので、全く別物として演じました。

戸次:でも、舞台が原作と言われた瞬間に、作中のSF的な要素について、「なるほど」と思いました。言われてみれば、舞台らしい演出だなと。

ゆらり サブ5

──では、お2人の理想の家族像について教えてください。

萩原:我が家はすごく家族の仲がいいんです。母とお父さんの取り合いをしてるくらいなんですよ。お父さんと結婚できるなら、したいくらい。

いつも、父と結婚した母が本当にうらやましいって話してるんです。母とも、友達みたいに腕組んで買い物したり、弟とも仲がよかったり、穏やかな家族だと思います。

戸次:いいなぁ〜。理想の家族像、現在進行形ですね。

萩原:だから、結婚したら両親のように仲がいい夫婦になりたいですね。でも、娘がそう思えるのは、母のおかげでもあると思うんです。父をちゃんと立てて「パパが一番だからね」って小さい時から言ってくれていたので。将来子供ができたら、そんな母の真似をしたいと思うし、今の自分と同じような想いを持ってくれたら、って思います。

戸次:お父さん、おいくつですか?

萩原:46歳です。

戸次:はぁ〜!(深いため息)僕は今年、44歳になるんですけど…はぁぁ〜。

萩原:母と同い年です!

戸次:お母さんと一緒か〜。はぁぁ〜。なんとも言えない感覚ですね(笑)。

萩原:(笑)。

戸次:僕の理想の父親像はもう、娘にこう思ってもらえる父親ですね。

──ちなみにお父さんのどこが好きなんですか?

萩原:全部です! かわいいし、イケメンだし、変に干渉してこないし。怒ると、クラシック音楽をかけて気持ちを鎮めたり、「眠くなっちゃうと本が読めないから」って、毎晩お酒を控えていたりとか。メールも敬語なんですよ。先日も「東京は寒いようですね。みのりさん、ご自愛ください」ってメールがきて、「紳士的!」って(笑)。両親は“さん”付けで呼びあってるんですけど、そういうのもいいなぁ、って思いますね。

戸次:今だに恋愛してるような感じがしますね。まさに、ドラマに出てくるような夫婦。

萩原:弟も私のこと、みのりさんって呼ぶんで、変な家族なんです。

戸次:いや〜、そんな家族に憧れたんですけど…。みのりさんのお父さんみたいにはなれないな、と諦めました(苦笑)。

ゆらり サブ3

──今作では、あのときこうしていれば、というような想いを抱える人たちが出てきますが、世の中には家族に対して素直になれない人も多いと思います。そんな人たちにアドバイスをお願いできますか?

戸次:親がいつまでもいるものじゃないということを知識として知ってはいるけど、子供としては亡くすまでわからないものですよね。だから、素直になれない方は、「もし明日親がいなくなったら…」って思ってみたら、親に対しての態度も変わってくると思います。

萩原:私も岡野真也さんが演じた凛香さんのように、反抗期はえげつなかったんです。でも、田舎に育って、ずっとここにいるんだろうなって思ってたのに、突然ひとりで上京することになって。家に帰っても誰もいない、ご飯の匂いがしないって、親の存在だけでなく、そういう当たり前だと思っていたことが当たり前じゃないこともあるんだ、って、気づいたんです。

一回離れたからこそ、実家での時間を大切にしたいと思えて。そういうきっかけを知ることで、人って変われるはずです。あとになって後悔しても遅いし、今会えるところにいるのなら、一緒にいる時間を大切にした方がいいと思います。いっぱい家族に会える人はラッキーなので、もっとその時間を大事にしてほしいなって思います。

ゆらり サブ1

戸次:10代のときにそれに気づけたのはラッキーだと思いますよ。僕もこの作品の主人公と同じで母を亡くしているので、もし時間を戻すことができるのなら、「また母ちゃんのご飯が食べたいな」と思いますし。

就職して家を出てしまったら、年に1回くらいしか会えなくなるわけですよ。例えば、僕と同じ40代の人で母親が60代だとしたら、親が80歳くらいで亡くなると考えたとき、あと20回くらいしか母親のご飯を食べられない。回数券のようにあと何回、ってカウントしていくような年代なんだと思います。そう考えたら、家族への接し方が変わってきますよね。

萩原:私の場合は弟が教えてくれたんです。弟が「もし僕が地方に行ってしまったら、僕はあと何回、のんちゃんに会えるんだろう」って、お母さんにボソっと言ったらしくて。「そんな風に考えたことなかった!」ってハッとして、それからできるだけ実家に帰るようになりましたね。

──ちなみに、どんな反抗期だったんですか?

萩原:何に怒ってるかわからなかったんですけど、なぜかイライラしていて、ドアをバン!って閉めて部屋にこもって。そのあとにすごく虚しくなって、心の中でごめんなさい、っていうのを繰り返してました。それがあまりにも嫌で、家族に「明日から反抗期やめます」って宣言して、本当にやめたんです。

戸次:かわいいね〜。

──では、最後に今作の見どころを教えてください。

■戸次:「涙」■萩原:「沢山の愛がつまった作品です」

戸次:3部構成の映画なのですが、自分が出てないところも含めて、全部泣いてしまったんです。子供が生まれまして、とみに最近涙腺が緩くなっちゃって。「子供」、「家族」、というワードに弱くて、ボロ泣きしてしまう体質になってしまいました。

この映画も、涙、涙で観ていました。なので「涙」のひと言ですね。僕自身が見事に横尾初喜監督の術中にはまったお客のひとりとして、ぜひいろんな人に観て欲しいと思います。

萩原:会えないし、誰にも言えなくて、自分の心の奥にずっと閉じ込めてきた父という存在に対して、長年溜め込んできた愛なんかを初めて吐き出したシーンがとても気に入っています。

私が出ていないところでは、いろんな想いを抱えながら親子でカレーを食べるラストのほうのシーンもぐっときますし、この映画の中にどれだけの愛が詰まっているんだろうと。

いろんな角度から家族が描かれていて、きっと感情移入もできると思うので、この映画を観て、家族について考えてみてもらえたらうれしいです。

映画『ゆらり』は11月4日(土)より、池袋シネマ・ロサにて公開(全国順次)です。

【公開情報】出演:岡野真也、内山理名、戸次重幸、萩原みのり、山中崇、遠藤久美子平山浩行、渡辺いっけい、鶴田真由監督:横尾初喜原作/脚本:西条みつとし(TAIYO MAGIC FILM)

(撮影:結城さやか、ヘアメイク:<戸次>白石義人(ima.)<萩原>宇賀理絵、スタイリスト:<戸次>小林洋治郎(Yolken)<萩原>瀬川結美子、取材・文:大谷和美)

(C)2017映画「ゆらり」製作委員会