(C) 2013「ひまわりと子犬の7日間」製作委員会

12月9日から公開される映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』は、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズでおなじみ西岸良平・原作&山﨑貴監督のコンビによる最新作ですが、これまでの山崎作品の中でも最高傑作と讃える声も高いファンタジックな夫婦の物語です。

その中で鎌倉在住の小説家を演じている堺雅人の飾らない等身大の演技はいつもながらにお見事。また彼は2018年3月には吉永小百合と親子役で共演した『北の桜守』でも好演しており、2016年の話題を一手に集めたNHK大河ドラマ『真田丸』に引き続き、絶好調の模様です。

さて、今回はそんな堺雅人が2013年に主演した、人と動物と家族のヒューマン映画『ひまわりと子犬の7日間』をご紹介しましょう!

犬の殺処分を回避すべく腐心する保健所職員の主人公の労苦

映画『ひまわりと子犬の7日間』に舞台となるのは、2007年の宮崎県東部。もとも動物園で飼育員として働いていたものの、園が閉鎖して今は保健所に努めている神崎は、動物の殺処分という重い仕事を担当しています。

通常、保健所で引き取った犬が殺処分になるまで1週間。しかし彼は犬たちに何とか里親を見つけてあげようと努めるあまり、7日を過ぎてもなかなか殺処分を実行しようとはせず、上司から叱責されがちな日々です。

そんなある日、3匹の子犬と狂暴な母犬が保健所に収容されてきました。神崎の娘・里美は母犬たちを救ってあげられないかと嘆願し、まもなくして母子ともども引き取ろうと申し出る人が現れますが、母犬が安全であるという保証がなければいけません。

神崎は一週間で母犬を懐柔すべく、泊まり込みで世話を始めていきます……。

現在、動物の殺処分問題は深刻な問題と化して久しいものがありますが、本作も2007年に宮崎県中央保健所で実際に起きた出来事を基に映画化されたものです。

監督は、名匠・山田洋次監督のもとで助監督や共同脚本を長年担当し続けている平松恵美子。これが初監督作品となりましたが、師匠譲りの的確な人間描写と、そこから醸し出される温かなヒューマニズムは、従来の動物映画とは一線を画した秀逸なもの。

要するに早々と宣言してしまいますと、この作品、動物を主題にした映画の中でも屈指の傑作です。

また、これはさりげなくですが主人公親子の子どもたちに向けられた目線が実に瑞々しく、この監督がキラキラ系の恋愛青春映画を撮ったら、さぞ面白いものができるのではないかと確信したくなるほどのものがありました。その意味でも、ぜひ第2作も実現させていただきたいところです。

動物と家族、そして女性たちにエールを送り続ける主人公

さて、主演の堺雅人に視点を移しますと、ここでの彼は愛する妻を亡くし、男手ひとつでふたりの子どもを育てていますが、生来の動物好きゆえになかなか殺処分を実行できず、また自分の現在の仕事を同じく動物好きな子どもたちに告白できないままでいるジレンマにも悩み続けています。

堺雅人はどこかしら笑っているような泣いているような、曖昧な表情の奥から複雑な人間の感情を巧まずして醸し出すことに長けた俳優だと私自身は捉えていますが、本作は役柄も功を奏して、そんな彼の資質がフルに活かされた代表作の1本と大いに讃えたいものがあります。

昔から映画界には「動物と子役には、どんな名優もかなわない」といういわれがありますが、本作の堺雅人に関しては、それはあてはまらないようです。

またこの作品、総じて女優陣も好印象をもたらしていて、そこにも平松監督の目が行き届いているように思えてならないのですが(作品全体のトーンも、主人公の亡き妻の目線で一貫して綴られている感もあります)、そんな女性たちに見つめられながら一見タジタジと、しかし実は彼女たちと真摯に対峙し続ける主人公のスタンスがより好もしいものとして映えています。

その一方、お笑い人気芸人オードリーの若林正恭をイマドキの低温気質の若者に据え、そんな彼が徐々に仕事に対して熱くなっていくも、そのせいで騒動が勃発していくあたり、『男はつらいよ』の寅さんではありませんが、やはり男はいつの時代もトラブルの種であるという、松竹映画の伝統に根差したものかもしれません⁉

本作は動物と人間、家族、そして女性たちに(そして男たちの情けなさにも?)大いにエールを送った、松竹ならではのヒューマニズムに満ちた快作であるともいえるでしょう。堺雅人のファンの方はもちろん、そうでない方もぜひご鑑賞のほどを(見終わった後、きっと彼のファンになること必至!)

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年12月8日現在配信中)b_hulub_hikarib_unextb_netflixb_amazonb_jcomb_auvideob_gyaob_rakutenb_itunesb_googleplay

(文:増當竜也)