『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン監督が歴史的な史実の映画化に挑んだ最新作『ダンケルク』について、これまでにない映像体験を実現するために挑んだ、並外れた映画作りの裏側を明かした。

 新作のたびに、驚きに満ちたストーリーと新たな映像体験を観客に提供してきたノーラン監督。『ダンケルク』では、第2次世界大戦中、ドイツ軍に包囲されたフランスの港町ダンケルクからイギリス・フランス連合軍の若き兵士たちを撤退させた歴史的な救出作戦が描かれる。史実の映画化について「興味深いチャレンジでした。現実の出来事というのは、フィクションの世界よりはるかに荘厳なものですから」というノーラン監督。それでも本作に挑んだのは、「観客を行ったことがない世界に連れて行き、体験したことがないことを体験させる」というアイデアを実現するためだ。

 本作では、陸・海・空、3つの視点で展開する出来事が並行して描かれており、「観客を飛行機のコクピットの中にいるように感じさせたり、ボートや海上にいるように感じさせたり、すごい数の兵士たちがいる混沌とした海岸にいると感じさせる。これまでの映画でも、ほんの少しそうした表現を試みたことはありましたが、ストーリー全体で……というのは初めてでした」とノーラン監督。

 そのため、高価で巨大ながら高精度の映像を実現するIMAXカメラとフィルムを使用し、極力CGに頼ることなく、実際の出来事を撮ることにこだわった。イギリスの戦闘機スピットファイアの飛行シーンでは本物の飛行機を飛ばし、その翼に巨大なIMAXカメラを取り付けたという。「役者を飛行機に乗せ、実際に空でクローズアップを撮ったりもしました。本物の空中戦の感覚を作り出し、過去にどの監督もやったことがないことをしようとしたんです」。

 「もし空中戦をCGで描いたら、必然的に物理学的法則を破ることになります。飛行機の旋回が速すぎたり、ありえないほどカメラに近づいたりする。CGアニメーターは、ビジュアル的にエネルギッシュでエキサイティングなものをもとめるからです。でも私は、それが現実の出来事だと直感できるものを作りたかった。飛行機に乗って敵を撃ち落とそうとすることが、どれほど苛立ち、困難で危険なことなのかを、観客に感じてほしかったんです。パイロットと共に空中にいて、彼らの視点で物事を見る。それは、最も強烈な映画体験となるはずですよ」。

 そんな監督のこだわりは並大抵ではなく、劇中のあるシーンを撮るためにIMAXカメラを水没させたほど。「カメラが入っていた容器は残念なことに壊れて、スタッフが回収するまで、何時間も水没していました」というものの、「でもフィルムカメラですからね。びしょ濡れのままフランスからアメリカに送って、工房で乾かしました。そのショットは完璧な状態で、映画に使用していますよ。デジタルカメラだったらそんなことはできません」と満足げに語った。(編集部・入倉功一)

映画『ダンケルク』は9月9日より全国公開