たくさんのスーパーヒーロー映画が製作される昨今。ヒーロー戦国時代と言っても過言でないこのときに公開された映画『パワーレンジャー』は、一目見てもアメコミヒーローとは毛色が違うが、その強みとは何なのか。メガホンを取ったディーン・イズラライト監督に話を聞いた。

 『パワーレンジャー』とは、アメリカをはじめとする世界各国で放送されているドラマシリーズの劇場版。日本のスーパー戦隊をベースとした24年続く人気シリーズだ。スーパー戦隊と同じように「子供の頃に見ていた」というタイプの作品なのだが、この度ハリウッドで潤沢な予算のもと映画化。すでに作品を観た日本の観客からは、「ハリウッドが本気出したら日本のスーパー戦隊こうなった」的な感想がSNS上にあふれているが、そもそもイズラライト監督が目指したものとは?

 自分自身も『パワーレンジャー』を見て育ったというイズラライト監督。本作にかけた情熱が生半可なものでないことは、語り口からも伝わってきた。繰り返すのは、『パワーレンジャー』を現代的かつ現実的なものにアップデートしたかったということ。監督は「キャラクターの性格や彼らの抱える問題、経験するすべてが、僕らがいま生きている時代にとって、感情移入できるものになるように気を配った。ビジュアルやコンセプトなどのアプローチからも、すごく現実的でリアルに感じられる映画にしたかったんだ」と語る。

 そして、それこそがアメリカに多く存在するほかのスーパーヒーローたちとの違いだと、イズラライト監督は熱弁する。「僕はアメリカのスーパーヒーロー映画を観ているし、大好きだけど、彼らを観ても自分自身をそのキャラクターの立場に置くことはできないんだよ。彼らは億万長者の発明家だったり、ミュータントだったり、異星から来た神だったりする。でも、『パワーレンジャー』はティーンエージャーの話なんだ。僕もかつてそうだったし、誰しもがティーンエージャーだったんだ」。

 「『自分もパワーレンジャーになれる』と感じられるような映画を作りたかった」とねらいを明かすイズラライト監督は、「この番組が子供たちの間で人気があったのは、彼らがキャラクターの1人に自分自身を重ねることができるからだ。それは意味深いことで、自分をパワフルに感じさせてくれる。ほかのヒーローとは大きく違う点だよ。『パワーレンジャー』は誰もが感情移入できるパーソナルなスーパーヒーロー映画なんだ」と差異を強調する。

 映画全体としては、「モーフィン(=変身)」が重要なメタファーにもなっている。オリジナルのドラマシリーズを「変身=成長過程での見た目も含めた変化」を描いたものと理解するイズラライト監督は、「この映画で成長や自分自身が誰であるかを見つけることについて描きたかった。テーマは変化(=変身)なんだ。子供たちが、自分たちのティーンエイジの殻を脱いで大人になることについてなんだ」と説明する。

 実際、劇中でメインキャラクターの5人は、ヒーローとなり得る力を手に入れながらもなかなか変身することができない。5人がパワーレンジャーとして敵と対面するまでに、それぞれが抱えるトラブルや内面的な葛藤を乗り越えなければならない。「成長することで彼らは、やっと自分たちが属するスキン(肌)にフィットすることができる。そのスキンがパワーレンジャー・スーツなんだ。だから、彼らがやっと自分たちのアーマー(鎧)を手に入れられるのは、彼らにとって、なるべき人間になることの比喩表現なんだよ」。

 こうした意図で製作された作品は、いわゆるヒーローものや特撮好き向けの映画と言うよりも、普通の高校生たちの“成長物語”に仕上がっている。(編集部・小山美咲)

映画『パワーレンジャー』は公開中