話題のテレビドラマ「コウノドリ」で繊細な演技を見せ、綿矢りさによる同名小説を基にした『勝手にふるえてろ』(公開中)では長編映画初主演を果たした松岡茉優が、自身の役づくりについて語った。

 この映画は、中学時代の同級生であるイチ(北村匠海)への片想いをこじらせて10年、勝手な妄想を「爆発」させるOLヨシカ(松岡)に猛烈アタックをしかける同僚のニ(渡辺大知)が現れ、彼女が2人の彼氏の間で揺れ動く恋愛映画と説明してしまえばよくある話に聞こえるが、実は全く異なる。松岡はヨシカとして出ずっぱりの熱演で、セーラー服を着た学生時代から10年にわたる変化をナチュラルに体現し、ミュージカルシーンまでさらりとこなしている。

 そんな彼女は演技に対して徹底して生真面目で、高校時代は仕事のためにノートを常備していた。それは役柄にまつわるものや、映画や舞台の感想を書き留めるもの、肌身離さず持ち歩いて気付いたことを書き留めるものなど数冊に及んだ。そのノートについて聞くと「なんか恥ずかしいですね」と笑う松岡は、「今は、洗濯で小物と柄物を分けていたのを『一度に洗っちゃえ!』というように、1冊にまとめちゃいました」とその習慣は継続しているようだ。

 それはネタ帳代わりでもあるそうで、松岡は「電車で見かけた人の仕草や、気になる言いまわしを書き留めています。書いておかないと忘れちゃうから」とコツコツとした努力をうかがわせる。それは「一つの役を誰か一人をモデルにして演じてしまうとその人になってしまう気がするから」という思いに裏付けられたもので、「髪型はこの人、仕草の癖はあの人といろいろな人の要素をぎゅっとまとめたほうが役に奥行きが出るのかなと思っているんです」というから面白い。

 今回のヒロインであるヨシカの性格の部分については、インターネットで偶然見つけたある人物をモデルにしたそうで「SNSをやってらっしゃる方なのですが、とても懸命に生きていて、気丈に振る舞い、会社では頼れる人だと思うんです。でも反骨精神が強く、常に不満を抱えていて、生い立ちも……って、私その人のことをものすごくよく知ってるんですけど」とぶっちゃける。そして「その彼女がこの映画を観て少しでも生きやすくなるような映画にしたかった」と本作に込めた思いを明かした。

 間口を広くするのではなく、ヨシカ的な女子に届くようにと的を絞った結果、メガホンを取った大九明子監督も似たような思いで映画づくりをしていたそうで「二人の細い糸と糸が絡み合って、気付いたら思いがけない普遍性が生まれて、共感してくれる人がたくさんいたんですよね」と不思議な発見があったという。松岡茉優がこの映画で、またひとつ女優として進化を遂げている。(取材・文:浅見祥子)